矯正 お悩み

歯科矯正にかかる期間はどれくらい? 「リテーナー」による保定は必須なのか

22.08.28

歯科矯正といえば、何年も治療期間がかかるイメージから、治療開始を迷われる方も多いのではないでしょうか。大人の矯正は、一度始めると軽度な症状で半年程度から、長いと重度な症状で3年以上かかるケースもあります。また「保定期間」といって、動的治療後歯並びが後戻りしないようにする期間も必要です。
そこで今回は、代表的な歯科矯正治療や保定にかかる期間について詳しくご紹介します。症状の度合いや治療方法などにより必要な期間は異なるので、ライフスタイルに合った矯正方法を見つけるためにも、ぜひ参考にご覧ください。

歯科矯正の期間は「動的期間」と「保定期間」がある

歯科矯正治療にかかる期間には、矯正装置の力を使って歯を動かして歯並びを整える期間と、整った歯並びが元に戻るのを防ぐための保定期間がかかります。

歯を動かす期間(動的治療)

矯正装置を装着し、装置から加わる圧力によって歯を正しい位置に整えていく動的期間です。
前歯の一部のみなど「部分矯正」の場合で半年~1年程度、奥歯を含め全体的に歯を動かす「全体矯正」の場合で1~3年程度の期間かかることが多いです。

歯並びを保つための期間(保定期間)

動的治療後に何もしないままにしておくと、動かしたばかりの歯は元あった位置へ戻ろうとします。これが「後戻り」といわれる症状です。動かした位置で歯が固定されるまでにはしばらくかかるため、動的治療が終わった後にリテーナー(保定装置)を1~2年ほど装着します。

なぜ歯科矯正は長い期間が必要なのか

そもそも、なぜ歯科矯正は何年もの期間がかかるのでしょうか。「1カ月に1回の調整でなく、回数を増やしてもいいから早く動かしたい」という方もいらっしゃいますが、月に一度、数ミリずつしか動かせない理由があります。

歯が動くために必要な組織のしくみ

歯と顎の骨の間には「歯根膜」という組織があり、歯と骨にかかる衝撃を和らげるためのクッションのような役割を持っています。歯根膜は一定の厚みで保たれていますが、矯正装置で歯に圧力を加えると、その刺激が歯根膜に伝わります。動かしたい方向への歯根膜は縮み、反対側の歯根膜が引き伸ばされるのですが、一定の厚さを保とうとする性質が働くため、組織の修復に時間がかかります。
縮んだ側の歯根膜は横の骨を溶かして歯根膜の厚みを広げようとすることで破骨細胞の働きが活発になり、伸びた側の歯根膜は広がった部分に骨を作るため骨芽細胞が活発になります。この繰り返しで徐々に歯が動かしたい位置へ移動しその場所で固定されていくため、強い力を一気にかけたからといって早く動くという訳ではないのです。

無理に動かすことで失敗を招く恐れもあります

もしも無理な力をかけすぎてしまうと、組織の修復が間に合わないだけでなく、歯ぐきや神経ヘダメージを与えてしまう可能性もあります。歯ぐきが溶けて、並んだあと歯ぐき下がりが目立ってしまったり、神経が壊死し、歯を健康に維持できなくなる可能性もあるため、早く動かすために無理な力のかけ方はできません。

保定期間は必須です

「歯並びは綺麗になったから」と保定装置を付けなかったり、矯正歯科の定期健診を受診されないと、後戻りを起こすリスクが高くなってしまいます。先述したように、動かしてすぐの歯並びは内部組織や歯を支える顎の骨の穴(歯槽骨)が不安定のため、元の位置に戻ろうとします。保定装置を日常的にも付けておくことと、定期的に矯正歯科のチェックを受けることで、整えた歯並びを長く保つことができるので、保定期間は治療期間の中で動的治療と同じく重要な期間でもあります。

リテーナーによる保定期間はどれくらい?

動的治療終了後の3~4カ月目は、まだ歯根膜が安定していない時期で最も後戻りしやすい期間とされています。特にワイヤー矯正は装置撤去しますので、歯列の固定がなくなります。そこで、取り外しできるリテーナー(保定装置)を終日使用しておくことが必要になります。マウスピース矯正の場合も含め、動的圧力のかからないマウスピースや、ワイヤーと歯科用プラスチックでできた保定装置を最低でも1~2年装着することが多いです。保定期間は後戻り予防のリテーナーを使用しながら、矯正歯科医院が提案する間隔でメンテナンスに通います。始めは間隔が短いですが、徐々に長くなり、3カ月に1回~半年に1回など、年に2、3回というパターンが主流です。

リテーナーの種類

・フィックスリテーナー
前歯の裏側に細井ワイヤーを接着させて固定する方法です。後戻りしやすい前歯を中心にワイヤーで直接歯を固定することで後戻りを予防します。抜歯矯正の場合は左右の小臼歯間、非抜歯ケースは左右の犬歯間から装着させることが一般的です。基本的に外す目安は設けておらず、付けたままという人も多いようです。

・ベックタイプリテーナー
歯の周りを細いワイヤーで取り囲む形状の取り外し可能なリテーナーです。内側を歯科用プラスチックの床で裏打ちしますので、抜歯矯正や歯列幅を広げるような処置を行ったケースの歯列を維持するために効果的です。

・QCMリテーナー
ベックタイプリテーナーとほぼ同じ構造と保定効果のある装置です。歯を取り囲む部分が透明なファイバーを用いているので、見た目が気になる方におすすめですが、長期間使っているとワイヤーよりも劣化しやすいというデメリットもあります。

・マウスピースリテーナー
マウスピースタイプのリテーナーです。透明で目立ちにくいのですが、歯列全体を覆うことになるため、ワイヤー矯正後のリテーナーとして使用される場合、違和感などから外した時間が長くなると効果を発揮できなくなってしまうので注意が必要です。マウスピース矯正だった方は、スムーズに意向できると思われます。

まとめ

矯正治療は歯根が埋まっている内部組織や歯槽骨などを健康に守るためにも少しずつ動かすことしかできません。歯並びによって個人差はあるものの、動的治療だけでなく保定期間も要して2~3年かかるケースが多いようです。特に、動的治療後の保定期間は重要です。保定装置を正しく使わないと後戻りしてしまう可能性が高くなるためです。リテーナーは1~2年ほど保定期間で使用しますが、症状に合わせて外して良い時期は歯科医師と相談しましょう。

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