歯周内科

歯周病は、虫歯と並んで歯を失う二大トラブルの一つですが、最近は歯周病で歯を失う方が急増してきました。

歯周病の治療は歯石除去という方法で行われるのが一般的ですが、当院ではお口の中に存在する最近を薬によって改善する「歯周内科」という治療法を推奨しております。大切な歯を歯周病から守るための新しい治療法である歯周内科について詳しくご説明いたします。

歯周病になるメカニズム

歯周病とは

歯周病は、歯周病菌が出す毒素によって歯を支える歯周組織に炎症が起こる病気です。歯を支える組織とは、歯肉、歯根膜そして歯槽骨であり、歯周病に罹患すると歯ぐきの腫れや出血といった症状が起こります。 そして症状が悪化すると、歯を支えている歯槽骨が吸収されて歯を支えることが難しくなり、やがてグラグラになって抜け落ちてしまいます。

歯周病は虫歯のように歯が痛くなるわけではありません。歯ぐきの腫れと出血が主症状ですが、歯周病の初期段階では痛みを感じることはほとんどありません。そのため症状が進行しないと歯周病と気付きにくいのです。

歯周病になる原因

では歯周病はどのようなメカニズムで罹患するのでしょうか。歯周病を引き起こすのは、プラークと歯周病原菌です。プラークとは歯垢のことで、お口の中の細菌が作り出した白くネバネバとした物質です。お口の中に歯周病原菌が存在すると、プラークに棲みついて毒素を出し、歯周組織に炎症を引き起こすのです。 歯ぐきに炎症が起きると、歯と歯の溝にある「歯周ポケット」の数値が高くなります。腫れて歯周ポケットの数値が高い歯ぐきから細菌が奥深くまで入り込んで毒素を放出し、歯槽骨を溶かしていくのです。

歯周病の発生時期

では歯周病原菌はいつ頃お口の中に棲みつくのでしょうか。虫歯菌は離乳食を始めたころに感染し、そのままお口の中に定着します。いっぽう歯周病菌は、10代後半頃に定着すると考えられています。

歯ぐきの腫れと出血は、低年齢でもよく見られます。特に思春期頃はホルモンバランスの影響で歯肉が腫れやすく、口腔内の衛生状態によっては歯ぐき全体が赤く腫れあがり、歯磨き時に出血が起こりやすくなりますが、10代後半までは歯周病ではなく、そのほとんどは歯肉炎と診断されます。

20代になると、歯肉炎から徐々に歯周病へと進行し、年齢を重ねるにつれ罹患率は非常に高くなります。その結果、歯周病によって歯を失う方が急増するのです。

歯周病の標準的な治療について

歯石除去とは

歯周病と診断された場合の標準的な治療法は、歯周ポケット検査と歯石除去です。歯石はプラークが石灰化したもので、そのまま放置すると新たなプラークが蓄積されて歯周病菌が棲みやすくなるため、どんどん歯周病が悪化してしまいます。 歯周病の悪化を防ぎ、改善へと導く最も一般的な治療が、歯石除去です。

「縁上歯石」「縁下歯石」

歯石の付着には、歯ぐきよりも上に歯石が付着している「縁上歯石」と、歯ぐきよりも下の部分に歯石が付着する「縁下歯石」があり、歯石を取り除くことで歯周病菌が棲みつきにくい環境を整えることを目的とした治療法です。

縁上歯石は、超音波スケーラーという機械を使って歯石を取り除きます。固い歯石も超音波の振動でしっかりと取り除くことができます。

また歯石が縁下歯石の場合、「SRP」という処置を行います。SRPとは「スケーリング・ルートプレーニング」の略で、超音波の機械ではなく、キュレットと呼ばれる手動の器具を使って、歯の根元に固くこびりついた歯石を丁寧に取り除きます。

「SRP」以外の治療法

SRPでも取り除けないほど深い位置に歯石がこびり付いている場合、歯ぐきを切開して目視しながら歯石を取り除くF-op(フラップオペレーション)という外科処置を行うこともあります。歯ぐきの切開を伴うため、患者さんにとってやや負担が大きい処置と言えるでしょう。

このように、歯周病治療は歯石を取り除いて歯周病菌が棲みつきにくい口腔内環境へ導き、維持することを目的とした治療が行われます。

再発リスク

しかしお口の中の衛生状態は、3か月も経てば元の状態や、それに近い状態に戻ってしまいます。と言うのも、毎日歯磨きを頑張ってもプラークや歯石が付いてしまうためです。 特に歯周病と診断された方は歯周病の再発リスクが高く、次に来院したときは歯石やプラークだらけ・・・ということも珍しくありません。

つまり、歯石除去を行っても数か月経てばまた歯周病の再発と、このルーティン繰り返すことになるのです。

薬で治す新しい治療法「歯周内科」とは?

歯石除去を繰り返しても、またすぐに元の症状に戻ってしまう方や、口腔内環境が改善しない方にとっては、痛い思いをして歯石除去を受けてもすぐに元の症状に戻り、いつか歯を失ってしまうのではないかと不安な日々を送られることと思います。

歯周内科とは、歯周病の原因となっている細菌を特定し、内服薬によって歯周病菌を除去する新しい治療法です。歯周病は細菌による感染症であることがわかっています。歯周内科とは、抗生物質や抗菌剤を使って原因となっている菌を除菌することで清潔な口腔内環境へと導くことができる、新しい治療法なのです。

当院で行う歯周内科の流れは次のとおりです。

  • 1.プラークを採取し、位相差顕微鏡で菌や量を確認する

    歯周内科ではまずプラークを採取し、位相差顕微鏡で菌の種類や量を確認します。歯周病菌の代表はスピロヘーターですが、それ以外に歯周病を悪化させる細菌として、カンジダ、トレポネーマ、運動性桿菌などがあります。 歯周病菌が多いのか、カンジダのようなカビ菌が多いのかを顕微鏡によって確認し、次にお出しする内服薬を決定します。

  • 2.細菌を取り除くための薬の服用

    次に抗生物質や抗菌剤などを服用し、口腔内の除菌を行います。お口の中に存在する細菌の種類や量によって抗菌剤か抗生物質化を判断し、患者さんに服用していただきます。 なおカンジダ菌やトレポネーマは口臭の原因となり、お口の中のネバネバした嫌な感触は、これらの細菌が活発に活動しているためです。

  • 3.除菌効果の高い歯磨き剤による歯磨き

    お口の中の細菌の種類によって、使用する歯磨き剤も異なります。当院ではペリオバスターかハリゾンを投薬しています。

  • 4.投薬後1週間以内の来院と歯石除去、クリーニング

    お薬を飲んでいただいてから1週間以内に来院していただき、歯周ポケット数値の検査と歯周ポケットの洗浄、歯石除去およびクリーニングを行います。投薬の効果により状態が改善しているかどうか評価します。

  • 5.定期的な歯石除去やクリーニング

    投薬治療によって良くなった口腔内の状況を維持するため、3か月ごとの定期的な歯石除去やクリーニングに来ていただきます。歯周病の再発を防ぐためには毎日の歯磨きと、定期的なクリーニングが欠かせません。また歯周病を引き起こす細菌やカビが存在していないかどうかも確認し、歯周病から歯ぐきなどの歯周組織を守ります。