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「良い歯並び」とは? 噛み合わせの悪さとその影響について
24.01.28
噛み合わせが悪いとお感じの方で「歯並びは良いけど、噛み合わせが悪くて…。」と言われる方がよくいらっしゃいます。そのようなお話をお伺いしている中で、患者様の考える「歯並びが良い」という状態と、歯科が考える、整った歯並びについて、ズレがあると感じることがあります。そこで今回は「正しい歯並びと噛み合わせ」について考えてみましょう。
「噛み合わせだけを治せばOK」ではありません
「良い噛み合わせ」とは、上下の歯が正しい位置、噛み合うべき場所で正確に噛み合っていることをいいます。本来噛み合うべき位置で噛めているということは、歯並びも整っているということに等しいと思われます。
ただ、中には歯の「並び」は綺麗なのに、噛み合わせが合わないとお感じになり「噛み合わせの治療がしたい」とご希望になる方もいらっしゃいますが、噛み合わせだけ直せば良いとは限らないということを知っていただきたいと思います。
不正咬合・不正歯列とは
歯並びが不揃いであったり、上下で噛み合わない状態のことを「不正歯列」や「不正咬合」といいます。噛み合わせが適切な状態であることで歯並びが安定し、噛む力が歯や顎にバランスよく分散されます。不正咬合や不正歯列があると、見た目を気にする方も多いですが、歯や顎に過度な負担がかかったり、噛み合わせの不調和によって口腔機能への障害や歯の摩耗、顎関節への影響などを起こすこともあります。
「歯並びは良いのに噛み合わせが合わない」とはどういうこと?
歯並びは前後の凹凸がないのに、前歯が噛み合っていない場合は、上顎が前方に突出した形状であるため、いわゆる「出っ歯」になっていることが考えられます。また、上下の顎が横にズレているような場合も、歯の並び自体は良いのに、噛み合わせがズレているので噛み合わない部分が出てくるということも考えられます。
歯列矯正で治療する必要性は?
歯並びは良いのに、全体的に歯を動かす「歯列矯正」を行って、噛み合わせも調整しなければならないケースは多くあります。先述したように、噛み合わせだけを直そうと思っても、全体的に調整しないと、噛み合わせのバランスを整えることができないからです。
正しい噛み合わせの条件とは
では次に、正しい噛み合わせとは、具体的にどのような状態のことをいうのでしょうか。
矯正治療において、歯科医師が意識する「正しい噛み合わせの定義」としてよく挙げられる条件を解説します。
上下の正中線が一致していること
歯を奥歯で噛み合わせた際に、上下の中切歯が直線になり、なおかつ、お顔の鼻の下にある「人中」と顎の中央を結んだ線と一致していること。
1歯対2歯咬合であること
上の歯1歯に対して、下の歯は2本の歯が接触する関係性で噛み合っている状態であること。この噛み合わせを「1歯対2歯咬合」といいます。
奥歯に捻転がないこと
奥歯は臼のような形状をしており、咬合面は上下で噛み合うように複雑な形状をしている。歯の位置は正常でも「捻れ」がある場合はうまく噛み合和ないため、捻れがないことが必要。
上歯列前歯の切端ラインのバランスの良さ
歯を奥歯で噛み合わせた際に、歯の先端部分がバランスのとれた位置で並んでいるかどうか。
歯頸部のラインに均一感があること
歯と歯茎の境目である「歯頸部(しけいぶ)」のラインが均一であるかどうか。
V字型の健康な歯茎であること
歯と歯の間の歯茎の形状がV字に入り込んでおり、隙間がない状態であるかどうか。
上顎前歯が口唇より出ていない状態
口を閉じている時に上前歯が見えないことと、笑った時に、上前歯の先端がドライウエットラインに触れるかどうか。
※ドライウエットライン:下唇の濡れている(内側)部分と乾いている(外)部分の境界線
上顎前歯の上の歯茎が見えすぎない状態
ガムラインがやや隠れる程度で、歯茎が大きく見えすぎない状態であること。
※ガムライン:上口唇から上歯牙の境目のこと
噛み合わせが悪いと起こり得る症状
噛み合わせが悪くても見た目が良いと、治療をしないことを選択される方もいます。しかし、噛み合わせが悪いまま生活を続けていると、さまざまな症状のきっかけになってしまうことがあります。
例えば以下のようなことが挙げられます。
口腔機能障害
噛む際にかかる咬合圧が正しく分散されず、歯の一部にだけ過度の負担がかかってしまうことがあります。これにより、咀嚼や発音といった「口腔機能」に障害をきたしてしまう可能性があります。
歯の摩耗
特定の歯だけに過度な負担がかかると、その部分だけが摩耗してしまい、神経へのダメージなどから、歯の寿命が短くなる可能性があります。
顎関節への悪影響
噛む力の偏りから、顎関節に過度の負担がかかってしまうことがあります。これにより、顎関節の違和感や痛み、雑音やカクカク外れる感覚などを起こす可能性があります。
顔貌の変化
先述してきたような悪影響が起こることから、歯並びにも影響したり、口周辺の筋肉の緊張などから、願望の歪みやエラ張りなど、顔貌の変化を起こす要因になることもあります。
まとめ
良い歯並びとは、歯が綺麗に揃って並んでいることだけではありません。歯が正しい位置で噛み合い、口腔機能が適切に働くことで、ぞれぞれに持つ役割を最大限に発揮し、機能的にも見た目にも美しい歯並びと言えるでしょう。また、正しい噛み合わせは健康に過ごすためにも不可欠です。もしも歯並びは良いように思えても、噛み合わせに違和感を感じる場合は、噛み合わせにずれがあるのかもしれません。まずは歯列矯正による治療領域であるかも含め、矯正歯科を行っている医院でカウンセリングを受けることから始めてみましょう。