お口の中の衛生状態は、歯周病治療でどんなに良い状態になっても、3カ月も経つと元の状態やそれに近いくらいの状態に戻ってしまうことが多く見られます。どんなに日々の歯磨きを頑張っても、プラークや歯石がゼロの状態を作ることは難しく、特に歯周病治療を受けたことがある方は再発のリスクも高い傾向にあります。
そこで当院では「歯周内科」という、薬で歯周病になりにくい口腔環境を作っていく治療に取り組んでいます。

歯周内科とは？

歯科医院で定期的にクリーニングやスケーリング（歯石除去）を行っているという方でも、すぐに歯石がついてしまうという方や、口腔環境がなかなか改善しないという方もいらっしゃるのではないでしょうか？

「歯周内科」とは、歯周病の原因となっている口腔内常在菌を特定し、内服薬を使って歯周病の原因菌自体を除去するという新しい治療法です。
どんなに歯垢や歯石を除去しても、作り出してしまう原因となっている「菌」が減らなければ、再発のルーティーンから抜け出せません。
そこで、抗生物質や抗菌剤などの薬剤を用いて原因となっている菌にアプローチすることで、根本的な原因を改善することができ、結果として「歯周病になりにくい口腔内環境を作る」治療方法です。

当院で行う歯周内科の流れ

プラーク内の細菌を確認

まずプラークを採取して、位相差顕微鏡で細菌の状態や量を確認します。
代表的な細菌としてスピロヘーターという菌が多いのですが、他に歯周病を悪化させやすいとされる細菌としてカンジダ、トレポネーマ、運動性桿菌などが常在していないかなども確認できます。
常在する細菌の種類や数に応じて処方する内服薬を決定しています。

薬の服用開始

適した治療薬が決まったら服用を開始していただき、口腔内の除菌を行います。
歯周病菌以外にカンジダ菌やトレポネーマがある患者様の場合、口臭の原因となってしまっていることもあるので、同時に口臭治療にもつながることも期待できます。

毎日の歯磨き剤による除菌

ご自宅で歯磨きしていただく際の歯磨き剤を、除菌効果の高い歯磨き剤を用いて行っていただきます。
当院ではお口の中の細菌の種類によって、ペリオバスターかハリゾンを投薬しています。

歯石除去、クリーニング

投薬開始から1週間以内に来院していただき、投薬の効果により状態が改善しているかどうかの評価を行います。歯周ポケット数値の検査を行った後、歯周ポケットの洗浄、歯石除去、クリーニングなどを行います。

定期的な歯石除去、クリーニング

歯周病の再発を防ぐためには毎日の歯磨きと、定期的なクリーニングが欠かせません。そこで歯周内科治療を受けていただいて改善された良い口腔内環境を維持するため、3か月ごとに定期的な歯石除去やクリーニングにお越しいただいています。
歯周病の原因となる細菌等が存在していないかどうかも確認し、歯周病の再発予防と、早期発見・早期対処を行っています。

もしも歯周病が治りにくいと思ったら

軽度な歯周病は、スケーリングやクリーニングを受け、適切な歯磨きをすることで改善されることが多いのですが、歯周病が治りにくい、すぐに再発してしまう。という方はぜひ歯周内科が受けられる歯科医院でご相談されてみてください。
しかし、それでも歯周病になりやすいという人は、もしかすると他にも「なりやすい原因」があるのかもしれません。

喫煙している

喫煙は歯周病のリスクを高めると考えられています。
タバコに含まれる「ニコチン」は免疫力を下げてしまい、歯周病も改善しにくくなるためです。また、「一酸化炭素」は血管の収縮作用があるため、血流が悪くなり抵抗力が低下します。

糖尿病に罹患している

糖尿病に罹患していると細菌感染しやすくなるなど、歯周病のような慢性的疾患の進行を促進させてしまう原因になります。また一方、歯周病を発症していると、原因菌の毒素の影響で血糖値が下がりにくくなるという特性が働き、糖尿病を悪化させるという、相互的に悪い影響を及ぼす要因になってしまいます。

ホルモンバランスの関係

歯周病の原因菌は、女性ホルモンの成分をを好むという報告があります。思春期や妊娠時など、ホルモンの分泌量が増える時期には、口腔内にもホルモンの影響から歯周病菌が活発になり、歯周病のリスクも高くなってしまいます。

まとめ

歯周病治療はこれまで、主にスケーリングやクリーニングなどを行い、正しいブラッシングの継続をすることと言われてきました。勿論それらは大事な治療法ですが、ずっと頑張ってセルフケアや定期的な通院を頑張っていても再発し、痛い治療を受けることになる方もいます。
歯周内科治療は、根本的な「菌」にアプローチすることで歯周病になりにくい環境をプラスして定期的なクリーニングを行うことで、従来よりも患者様の負担を減らすことに繋がる治療だと考えています。
歯周病になりやすい、何度治療を受けても再発してしまうという方は、ぜひ一度歯周内科を行う歯科医院にご相談されてみてください。