知っておきたい 神経を抜く「根管治療」とはどんな治療?

23.06.30

よく「歯の神経を抜いた」という表現を耳にします。これは歯の中心に通っている「歯髄」という歯の生命線となる組織を除去することです。神経を失った歯は、歯を失うリスクが上がるため、できるだけ行いたくない治療でもあります。
しかし、歯髄が侵されてしまったままにする方が、歯にダメージが大きくなると診断された場合に、歯髄を抜く「根管治療」を行うことがあります。この治療は歯科の治療の中でも長期的な通院になることも多く「なぜ何度も通わないといけないの?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、根管治療について深堀してみました。
なんとなく分かっているようで実は知らなかった情報もあるかもしれませんので、ぜひ参考にお読みください。

根管治療とは


壊死した歯髄(しずい)を除去し、歯根の内部を治療することです。歯髄には神経や血管も通っており、栄養や水分を運ぶ役目を行いますが、虫歯が進行して歯髄まで感染してしまうと歯がズキズキと痛むようになります。自然治癒は望めないため、放置したまましておくと歯髄が壊死し、炎症から歯茎が腫れたり排膿を起こすこともあります。
歯を出来る限り温存するために、根管治療で内部に侵入した細菌の除去と、炎症を改善する治療を行います。

虫歯の進行と根管治療について

・C1 初期むし歯
はじめは表層のエナメル質が破壊され始めますが、固い組織のため、初期段階では削らずに進行を食い止めることもできます。

・C2 治療が必要な虫歯
次の象牙質という層に達すると、エナメル質よりも柔らかく感染が広がりやすくなり、中で大きく広がります。この段階までであれば、虫歯になっている部分を切削し、詰め物をして修復することができます。

・C3 根管治療が必要
改善が難しくなるため、歯をできるだけ残すための手段として、歯髄を取り除くことになります。

象牙質内部に歯髄腔(しずいくう)という空隙があり、虫歯がそこまで達すると、修復治療だけでは
改善が難しくなるため、歯をできるだけ残すための手段として、歯髄を取り除くことになります。

・C4 根管治療または抜歯
根管治療を行っても炎症が引かなかったり、排膿を繰り返すなど、予後が悪い場合には、やむを得ず抜歯するケースもあります

根管治療の流れ


根っこの状態にもよりますが、症状に合わせた「根管治療」を行います。
ここでは一般的な根管治療の流れをご紹介します。

①虫歯を取り除く

まずは原因となっている虫歯を切削用の歯科器材で除去します。その後歯髄腔が露呈したら、根管内の歯髄(神経や血管)を専用の器具で取り除き、感染した根管内を掃除して消毒します。
その日は内部の状態に合わせた仮埋めの状態にして終了です。

②定期的な洗浄と消毒

根管内部が細菌に侵されていた状態により期間が変わりますが、内部が綺麗になるまで、1週間に1回のペースで来院し、根管内を洗浄・消毒します。

③根管充填

症状を確認し、根管内が乾燥していることや炎症、排膿などがないことが確認できたら、根管の先端まで隙間がないように専用の充填剤を詰めます。
この日は取れにくい仮の詰め物で上部を塞ぎ終了です。その後、痛みや炎症の再発がないか様子を見ます。

根管治療は「根治」が難しい


よく「神経を抜いたのにまた痛んできた」「神経を抜いた後埋めていたが、また歯茎が腫れてきた」というような症状に悩まされているお声を耳にします。
根管治療は根治が難しい治療で、一度は症状が改善されたと診断されて根管充填しても、症状を再発することも少なくありません。

なぜ再発してしまうのか

根管はわずか数ミリの世界です。その中に1本の神経が入っているという訳ではなく、網目状に神経と血管が細かく張り巡らされています。歯科医師は精密機器を用いて歯髄の除去を行いますし、定期的な洗浄や消毒、レントゲン等で内部の症状の確認なども行っています。
しかし、取り切れない細かな組織が残ることや、被せ物の歪から細菌が内部に侵入してしまうなど、再発してしまう要素もゼロではありません。

再発を予防するために

抜髄後の予後を良く保つためには、歯髄が侵された状態をできるだけ早く治療することはもちろんですが、治療期間は提案された受診間隔を守って治療を行うこと。また、最後の歯冠修復までしっかり終えることが大切です。
また、治療終了後はお口の健康を保ち、再度虫歯や歯周病にならない清潔なお口の環境づくりも心がけましょう。
もしも痛みや腫れ、違和感を感じたら、放置せずにできるだけ早く歯科を受診するようにしましょう。

まとめ


一番は「根管治療になる手前までで虫歯を食い止める」ということが大切です。根管治療は完全な治療も根治も難しい治療で、一度歯髄を除去すると、歯の温存も難しくなってしまうからです。
歯髄の治療は歯科領域では「歯内療法」というジャンルで、歯髄の治療を得意とする歯科医師もいます。もしも歯髄の治療でお困りの方や、歯髄を抜くことになるのではないかと症状を感じている方は、できるだけ専門性の高い治療が受けられる歯科を探してみることもおすすめします。

                                   記事一覧へ戻る