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前歯が閉じない「開咬」はどうやって治す? 原因や弊害・治療法を解説

22.01.29

矯正治療が必要な不正歯列には大きくいくつかのパターンに分類されています。その一つとして「開咬」(かいこう)という歯並びがあります。不正歯列のひとつであり、前歯が咬み合わずに常に隙間が空いている状態のため「オープンバイト」とも呼ばれています。この歯並びは単に「歯」だけでなく骨格的な歪みも関係しているため、歯科でも矯正なのか口腔外科なのか、もしくは整形外科なのか??と迷われる方もいらっしゃるようです。
そこで今回、矯正歯科における開咬の治療についてまとめました。ご自身の歯並びが「開咬なのでは?」とご心配な方は、ぜひ参考にお読みください。

開咬(かいこう)とはどんな歯並び?

奥歯で噛み合わせた状態で、前歯に隙間ができる噛み合わせで、上下の前歯が咬み合わない状態です。
前歯は食物を摂取する際、はじめに「捕らえる」という機能を行う歯です。上の歯が下の歯に1/3ほど重なることで食物を噛み切ったり、麺類をすするために捕らえたりします。
開咬によって上下の前歯に隙間があると、これらを行うことが難しくなるため、舌を使って食物をそのまま口内の奥へ摂りこむクセがついてしまう方が多いようです。

なぜ開咬になってしまうのか

多くは、子どものころ、顎の成長期に行っていた「指しゃぶり」が原因です。指しゃぶりで起こる開咬の原因は以下の通りです。

顎の変形によるもの

顎は生後すぐから12歳ころまで、前後に広がりながら半円形に成長します。この時期に指しゃぶりで上あごを押し、さらに指を吸うことで両側から頬の圧力がかかると、顎は横が細いU型で上あごが上方に変形します。

歯が伸びきれないため

上下の前歯が永久歯に交換した後も指しゃぶりを続けていると、歯が一定の位置まで伸びきることができなくなり、さらに隙間ができる原因となってしまいます。

舌を前に出すクセによるもの

通常口の中では舌が上顎に付いていますが、指が入っていることで舌が下に追いやられてしまい、歯と歯の間から前に突出させる「弄舌癖(ろうぜつへき)」を起こしやすくなります。常に歯と歯の間に舌があることで、隙間を作りやすくさせてしまう原因になってしまいます。

大人になってから起こることも⁉

以前は隙間がなかった方が、顎関節頭の変形が起こることで開咬になってしまうことがあります。
下の顎の関節下(下顎枝)が短くなってしまい、奥歯しか当たらなくなることが原因で、10代後半~20代の女性に多く見られる症状です。

開咬になると困ること

開咬は「見た目の悪さ」や「食事のし辛さ」から治療を望まれる方が多い歯並びです。確かにそれらも問題ですが、他にも知らないうちに弊害につながっているかもしれません。
開咬によって常に隙間があるため「口呼吸」になりやすく、それによってさまざまな影響を及ぼす可能性が考えられます。

口内が乾燥しやすくなる

口内が乾燥すると唾液の分泌量が減るため、口腔内常在菌が繁殖しやすくなり免疫力も低下します。
そのため、虫歯や歯周病のリスクが高くなってしまいます。

口腔周辺の筋機能が弱くなる

口元が常にポカーンと開いていると周辺の筋機能が緩んでしまうため、口唇や舌で歯を整える機能が働かず、歯並びが悪くなることがあります。

感染症になりやすくなるかも⁉

通常の呼吸は鼻から行います。鼻には外部から菌やウイルスの侵入を予防するフィルターの効果がありますが、口呼吸していると体内へ侵入しやすくなるため、感染症に罹りやすくなるとも考えられます。

胃腸に負担がかかりやすい

食物を丸のみしてしまう可能性が高くなるため、正しく消化しきれず胃腸に負担が罹りやすくなってしまいます。

開咬は矯正歯科で治療できるのか

開咬は矯正歯科で治療できます。前歯上下の隙間が気になったら、まずは歯科医院に相談しましょう。
歯の傾きや並びを整えることで改善できる程度の症状であれば、マルチブラケットとワイヤーを用い
た矯正を行うのが一般的な治療法です。まだ顎の拡大や形成が可能な年齢であれば拡大装置などを併用して行うこともあります。
ブラケット・ワイヤー治療は目立ちにくい方法として、透明やセラミックのブラケット、ホワイトワイヤー、裏側に取り付けるブラケット、インコグニートなどを取り扱う医院もあります。症状によっては透明で目立ちにくく取り外し可能なマウスピース型矯正装置(インビザライン)でも治療可能なケースもありますので、ライフスタイルに併せてお選びください。

筋機能訓練も重要です! 

開咬は口元で起こる悪習癖が原因で起こることがほとんどですので、歯並びを整えても原因となっている癖がそのままでは「後戻り」を起こしてしまうことが予測されます。矯正治療後、前歯がしっかり閉じた状態を維持するために、舌の癖の改善や顎の変形を予防するための筋機能トレーニング「MFT」も受けていただきたい治療のひとつです。

骨格的な変形が強い場合

開咬の原因として、歯並びを整えただけでは上下の前歯の隙間が閉じないほど骨格的な変形が強い場合は、手術を併用して矯正治療を行うことがあります。この場合「顎変形症」と診断され、保険適応の矯正治療が可能となることもありますので、気になる方は歯科医師にご相談ください。ただし、顎口腔機診断料が算定可能な施設でなければ保険適応で治療ができませんので、受診前に確認しておきましょう。

〈外科手術が必要となった場合の矯正治療の流れ〉
1.外科手術前の矯正
まずは精密検査を行い、顎の手術を受ける前に行う歯列矯正を矯正歯科で行います。期間は半年~1年程度です。
2.外科手術
顎の骨の形成手術を行います。手術は個人差がありますが1週間~4週間程度の入院期間が必要になります。
3.再矯正治療
顎の骨が正しい形状に整ったら、そこから再度歯列矯正で歯並びと噛み合わせを整えます。これも個人差がありますが、半年~1年程度動的治療が必要になります。
4.保定期間
歯並びとかみ合わせが正しい位置に整ったら、矯正装置を撤去します。その後、歯並びが後戻りしないよう、保定装置を装着します。期間は1年程度。もしくは前歯だけ裏側からワイヤー固定で長期的に様子を見ることもあります。

まとめ


開咬の原因の多くは、歯並びだけの問題ではなく、骨格も関係していることが多い不正歯列です。歯列矯正で治すことはできますが、中には外科手術も必要になるケースもあります。
また、変形の原因も同時に改善しないと、矯正治療をしても思うように治療が進まなかったり後戻りしたりする可能性もあります。
気になったらまずは矯正歯科に相談してみましょう。外科手術の必要性など診断可能な歯科医院※は限られていますので、かかりつけの歯科医院がない方は受診前に確認されることもお勧めします。
※顎変形症などの診断可能な医院とは:
 厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関
 (育成・更生医療指定、顎口腔機能診断指定)

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