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インプラントは誰でもできる?骨造成が必要となる難症例をご紹介
21.10.24
インプラント治療は外科手術を伴う治療です。顎の骨(歯槽骨)に穴を開けてインプラントの土台となる人工歯根(インプラント体)を埋め込こみます。外科治療が必要ということもあり、誰でも受けられる治療というわけではありません。
中には治療が難しいと診断されることもあります。
そこで今回、インプラント治療の「難症例」とされているケースについて詳しく解説したいと思います。
インプラント治療をお考えの方はぜひ参考にご覧ください。
インプラント治療の「難症例」といわれる症例とは
インプラントは顎の骨に埋入し、土台が安定してこそ修復効果を発揮する装置です。ですから、支えられるだけの歯槽骨の量や質の良さ、高さや厚みが必要です。
それらが不足していると判断された場合に「治療ができない」と診断されることもあるのです。
そこで、そのような難症例といわれる状況は以下の2つが多いケースです。
- 歯槽骨の幅が不足している
- 顎の骨の高さが低い
- GBR法とは
- ソケットリフト法
- サイナスリフト法
- 骨造成の費用がかかります
- 通院回数が増える
- 歯茎の腫れや痛みが起こりやすい
- 感染リスクが高まる場合がある
歯槽骨は歯の根っこから伝わる咬合圧を受ける部分ですので、歯が抜けて刺激が伝わらなくなると痩せていきます。
歯を失ってからの期間が長いと、骨が痩せてインプラント体を埋入するための穴を開けられないと診断されることになってしまいます。
顎の骨の幅は穴を開けるには足りているものの、インプラント体を支えるだけの骨の高さ(8mm以上)が不足している場合、インプラント治療を行うことができません。
重度の歯周病などで歯を失った方などに多く見られる症状です。
難症例に対応するための治療法は?
インプラント治療を受けたいのに難症例と診断されてしまった場合でも、治療を受けることができるチャンスがあります。
それが「骨造成法」です。顎の骨の高さや厚みを増やすための治療が確立され、これまでインプラントできないと診断されていた難症例の患者さまであってもインプラント治療を受けることができる可能性が広がってきています。
難症例に対応する治療法は以下の3つです。それぞれ治療法を詳しく解説します。
・GBR法
・サイナフリスト法
・ソケットリフト法
歯槽骨の幅が不足していると診断された場合に用いられる骨造成法で「骨移植」と呼ばれることもあります。
歯槽骨の不足部分に患者さま自身の骨を一部摂取して粉砕させたもの、もしくは厚生労働省が認可した人口骨を移植する方法で、人工膜を被せたのちに歯槽骨が再生するまで一定期間置きます。
個人差はありますが、おおよそ半年ほど置いて、人工膜を除去しインプラント埋入手術を行う流れとなります。
歯槽骨の厚みの不足が少なく、インプラント埋入手術と同時にGBR法を行うケースもあります。
インプラント体を覆う形で粉砕骨もしくは人工骨を移植し、人工幕で覆ってピンで固定。その後3~6カ月のインプラント体が歯槽骨や周辺組織と結合し安定するまでの期間を置きます。
顎の骨の高さがインプラント埋入するために必要な高さを下回っているが、6mm以上はあるという場合に行われる骨造成法です。
歯槽骨にインプラント体を埋入するため上顎洞の粘膜を傷つけないように穴をあけます。
そこに超音波機器のピエゾサジェリーを用いて骨を安全に除去し、シュナイダー膜という粘膜を露出させます。
次に患者さんご自身の血液から作成した修復因子のフィブリンゲルを濃縮させたCGFとご自身の骨を粉砕したものまたは人工骨を移植します。インプラントを同時に埋入する場合はこのタイミングで挿入します。
顎の骨の高さがインプラント埋入するために必要な高さである5mmwp下回っている場合に行われる骨造成法です。
通常は上顎洞(目の下・鼻の横辺りにある空洞)の下の骨の部分にインプラントを挿入しますが、骨が薄いと貫通してしまう恐れがあるためできません。
そこで、上顎洞の側面を開けて患者さまご自身の粉砕骨または人工骨を移植して歯槽骨を再生させてからインプラントを埋め込みます。
ソケットリフト法と同様にピエゾサージェリーを用いて安全に切削を行います。
骨造成法の注意点
顎の骨が足りないことでインプラントは無理とあきらめていた方でも、骨造成法を行えば治療を受けることができる可能性が広がることがお解りいただけたと思います。
しかし外科処置となりますので、メリットもあればデメリットとなることもあります。
治療を受ける前にぜひ知っておいていただきたいことは以下の通りです。
インプラント治療は保険適応外の治療です。通常のインプラント費用に骨造成に関する費用が別にかかりますので、費用がさらに高くなります。
インプラント埋入を行う前に骨造成が行われます。骨と周辺組織の安定を図る期間を設ける場合は、通常のインプラント治療よりも通院回数や通院機関が長くかかります。
通常のインプラント治療よりも歯茎よりも下の部分に処置を施すことや治療回数が増えるため、歯茎の腫れ方や痛みが起こりやすくなります。
通常のインプラント治療よりも切開する回数が増えるため、歯槽骨や周辺組織が細菌感染のリスクにさらされる回数も増えることになります。
骨造成法ができない場合の難症例はどうする?
骨造成ができない場合でも、インプラント治療を受けることができる可能性もあります。
顎の骨が多く残っている場所にインプラントを立てて行う「オールオン4」です。
こちらは骨造成の必要はありませんが、適応は歯がほとんどないもしくは数本残っている状態という方に行われる方法です。
オールオン4とは
最小4本(もしくは6本)のインプラント体を土台として、総入れ歯のような形状の人工歯を支えるインプラント治療法です。
数本歯が残っている場合は抜歯を行い、インプラントの埋入から仮歯の装着まで即日行うことができます。
まとめ
インプラントは顎の骨にインプラント体を埋入し、歯槽骨や周辺組織としっかり結合しないと安定しません。
ですから、顎の骨が薄いまたは高さが足りないとなると治療を断られる場合もあります。
しかしそのような難症例も対応可能になる方法として、骨を造成したり、歯が少ない(もしくは全くない)場合には骨の強い部分に土台を立てるなど、いくつか方法があります。
ただし、骨造成やオールオン4は高度な技術や知識が必要となるため、対応できる歯科医師が限られます。
インプラントを受けるにあたり、ご自身が難症例の対象となるかもしれないとお思いの方は、対応可能な医院であるかも事前に確認しておかれることをおすすめします。