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妊娠中にインプラント治療できる?気になるリスクや治療のタイミングも解説
21.09.26
「妊娠中だけどインプラントを受けたい」「妊活中だからインプラント治療をしてもよいか不安」など、外科手術を伴う歯科治療であるインプラントは、妊婦さんやこれから妊娠をお考えの方は特に、母体や胎児への影響など気になることも多いと思います。
そこで今回、妊娠中のインプラント治療について、治療のタイミングや赤ちゃんへの影響など起こり得るリスクについて解説しますので参考にされてください。
妊娠中は治療は控えることをおすすめします
結論から言うと、妊娠中でもインプラント治療を受けることは可能です。
しかし、さまざまな「起こってほしくないリスク」を考えると、できれば妊娠中のインプラント治療はおすすめできません。起こってほしくないリスクは以下の6つです
- レントゲンやCT撮影が胎児に影響を及ぼす危険性
- つわり中の母体への負担
- 長時間仰向けの体制が与える影響
- 早産を誘発してしまう可能性がある
- 麻酔や処方薬剤の影響
- 産前・産後の母体への影響
インプラントは肉眼では確認できない顎の骨の中に埋入するため、治療前後にレントゲンやCT画像の撮影を必要とします。これらは放射線のリスクを伴うため、胎児へ影響を及ぼすかもしれないという不安を抱えることになります。
何か問題が起こったとき「あの時レントゲンやCTを撮影したことが悪かったのかな…」と後悔するようなことを避けるためにも、無理に行う必要がないのであれば、インプラント治療は避けておくのが無難です。
妊娠初期の影響はレントゲンだけではありません。妊娠2~3か月ころにピークを迎える「つわり」時期の場合、お腹はまだ大きくありませんが身体的な負担はかなり大きいものです。例えば吐き気で十分な食事を摂れておらず体力が低下しているようであれば、外科手術は想像以上に大きな負担になるでしょう。また、つわりで口腔内に歯ブラシが入るだけでも嘔吐反射を起こす人もいますから、長時間大きな口を開けたまま、治療器具が入るという負荷を考えると、無理にこの時期にインプラント治療をおすすめすることはできません。
歯科治療時には仰向けの体勢を取ることになります。短時間であればさほど問題はありませんが、インプラント治療は長時間仰向けの状態を取ることになります。
実はお腹が大きくなっている妊婦さんにとって仰向けはとても辛い体勢です。腰にも負担がかかりますし、さまざまな臓器が圧迫されます。腹部大動脈が圧迫されることにより、治療中に「仰臥位低血圧症候群」を起こすことがあります。
出産時、血液中に含まれる「サイトカイン」という情報伝達成分が高くなると出産の合図が出されるといわれています。インプラントの外科治療で出血量が増えることで免疫細胞がサイトカインの放出量を増やすため、出産時と似た状況を作ってしまいます。そこで子宮の収縮が行われ早産を誘発する可能性があると考えられています。ですから、妊娠中は出血量が増える歯科治療を避けたり、歯周病にならないよう促したりしているのです。
インプラント治療で外科手術を行う際には、痛みの軽減のため麻酔を使用します。また、治療後には抗生剤や痛み止めを処方されることもあります。もちろん基本的に身体に害はない量の薬剤が用いられますが、妊娠中の胎児への影響や母乳汚染のリスクに関しては100%影響がないとも言い切れません。これもレントゲンやCTと同じで、何かあった時に「避けておけばよかったかもしれない…」と思わなければならない事態は避けておきたいところです。
妊娠中のママの身体はさまざまな変化が起こります。これはお腹が大きくなるだけでなく、ホルモンバランスの変化や味覚・体質の変化なども起こる人もいます。インプラント治療は埋入手術から治療完了まで半年前後、顎の骨が少ない方は1年近くかかります。長期間の通院は妊娠中大きな負担となる可能性もあります。妊娠中はできるだけご自身とお腹の赤ちゃんの健康を発育を中心にお考えいただきたいと思いますので、インプラントは産後落ち着かれてから行うことをおすすめします。
インプラント治療開始のタイミングはある?
もしも妊娠する可能性がある時期にインプラント治療をお考えの場合「どのタイミングで治療を受ければいいの?」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。インプラント治療自体は妊娠しているからといって「できない」というわけではありませんが、これまで解説したようなさまざまなリスク回避を考え、タイミングを図ることは大切です。
インプラント治療を開始してすぐ妊娠がわかったら?
まず妊娠が分かった時点ですぐに歯科医師に相談してください。
インプラント埋入手術前の場合は、母体と胎児への影響を考え、治療を一時中断することも多いです。その際すでに歯を喪失している場合は、仮歯もしくは入れ歯などを使ってスペース確保を行い、咬み合わせや歯列の保持を行います。
そして産後落ち着いてから治療再開といった応急処置を取ることもあります。
インプラント埋入手術を終えてから妊娠がわかったら?
埋入後、特に問題が無ければそのまま産後落ち着いてから上部の人工歯を装着することになります。
埋入前と同様に、隙間があると歯並びが乱れてしまうため、スペースを確保する応急処置を行って様子を見ます。
インプラント治療完了後すぐに妊娠がわかったら?
治療後すぐは、まだまだインプラントが不安定です。
そこでしばらくは短い期間で定期的な通院が必要になります。
また、メンテナンスを怠るとインプラント周辺が細菌感染を起こし「インプラント周囲炎」を起こすこともあります。
妊娠中は体質やホルモンバランスの変化などによって、通常よりも歯周病を起こしやすい環境になりますから、治療を終えたといってもしばらくは注意が必要です。
まとめ
インプラント治療は長期的な治療になりますし、治療後も日々のメンテナンスを怠ることで不具合を起こすこともあります。
もしもインプラント治療中に妊娠が分かった場合は、基本的には母体と胎児への影響を考えて治療を一旦中断することがほとんどですが、治療の進み具合によって対処も異なります。
応急的な処置や治療で妊娠期をしのぎ、産後しっかり治療をすることもできますから、まずは担当歯科医師と産婦人科医の見解と治療計画などを確認しましょう。