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治療前に知っておきたい! 歯列矯正と審美歯科の「違い」について
21.06.25
矯正治療のご相談に来られる患者様のご意見を伺っていると、歯列矯正と審美歯科の違いが難しいのでは?と感じることがあります。
特に大人の方の歯列矯正の一番の目的は「見た目」であることが多く、歯列矯正は「歯を綺麗に並べること」だと勘違いされていることが多いのですが、実は歯列矯正と審美歯科はまったく目的が違います。
そこで今回、歯列矯正と審美歯科の違いについてご紹介することにしました。
皆さんに双方の目的はもちろん、治療のメリットやデメリットを知っていただき、ご自身の歯並びに関するお悩みをどちらの方法で解消されるか、参考にしていただければと思います。
歯列矯正と審美歯科の違いを理解して選択しましょう
歯列矯正と審美歯科では「治療の方法」や「目的」が全く違います。歯列矯正は乱れた歯並びや噛み合わせを正しい位置に整えるため、矯正装置を使ってゆっくり動かす方法です。
患者さまの歯を活かすことと、正しいかみ合わせを優先して治療を行います。
一方審美歯科は、審美性を最重要視し、短期的に見た目を整える方法で「美容歯科」と呼ばれたりもします。
どちらにも、希望する人によってメリット・デメリットとなる要素がありますので、治療を受ける前に「自身の希望はどちらに近いのか」十分理解して治療方法を選択しましょう。
歯列矯正とは
歯列矯正の目的は、あくまでも「歯並びや嚙み合わせを正しい位置に整える」ということです。
ですから、歯の形状はほとんどの場合、現状のまま行います。
歯は生えている場所によって役割が決まった形をしており、上下左右正しい位置で噛み合うことでバランスよくその機能を発揮するようにできています。
歯並びが悪いとそのバランスが崩れ、機能を上手く発揮することができません。見た目の改善はもちろんですが「嚙み合わせ」もとても重要ですから、歯列矯正で見た目だけを改善する治療は行われません。
まれに、噛み合わせに問題がなく、一部分だけに限局してズレがある場合には、部分的な矯正治療を行うことがあります。
- 治療期間は?
- 歯の状態は?
- 装置の種類
- 治療期間は?
- 歯の状態は?
- 審美歯科の種類
歯並び症状の度合いにもよりますが、歯並びと嚙み合わせを整える全体的な矯正治療の場合で約2~3年装置を付けることが多いです。部分矯正の場合はもっと期間が短くなります。
装置撤去後は歯並びの後戻りを予防するため「保定期間」を設け、リテーナーという装置を付ける期間が1~2年行ったり、歯の裏側に固定のワイヤーを装着したままにすることもあります。
基本的にご自身の天然歯を動かします。差し歯をしている場合は歯の根っこは自身の天然歯のため矯正治療は可能ですが、歯が移動した際に大きさや形のバランスが合わない場合も考えられますし、人工歯の素材によっては装置が付きにくいこともあり、一旦外して仮歯にして矯正するケースもあります。
インプラントやブリッジが入っている場合は歯の根っこまで人工歯のため動かすことができません。
矯正する場合には撤去しなければならない可能性が高いです。
・表側矯正(ラビアル矯正)
歯の表面に「ブラケット」という装置を取り付け、ワイヤーで固定して圧力をかけて歯を動かす方法です。
従来行われてきた矯正方法で、さまざまな歯並びに対応できる、最もオーソドックスな方式です。
最近では目立ちにくいように透明や白い素材のブラケットやワイヤーを導入している医院も増えてきています。
・裏側矯正(リンガル矯正)
ブラケットとワイヤーを歯の裏側に取り付けて行う方法です。
力の働きかけは表側矯正と同じ仕組みですが、装置を裏側に付けるため、矯正装置が目立ちにくくなります。
取り付けに高度な技術を要するため導入医院が少なく、どこの矯正歯科医院でも受けられるわけではありません。
・ハーフリンガル矯正
装置が目立ちやすい上の歯列だけ裏側に取り付け、下の歯列は表側に付ける方法です。
・マウスピース矯正
動かしたい歯に圧力がかかるように設計されたマウスピースを、定期的に取り替えながら歯を動かす方法です。
種類によっては前歯だけしか動かせなかったり、重度な重なりや骨格からの歪みがある場合は対象外となる場合もあります。
・その他
上記の方法に顎を広げる装置を追加したり、インプラントを用いた方法など、基本用いる装置に組み合わせて歯並びをより正しい位置に整えるための方法を行うことがあります。
審美歯科とは
一般的に審美歯科の目的は、歯の形や色をより美しくすることに焦点を当てて行う総合的な歯科治療です。
「より白くする」「歯の形を整える」「歯並びを整える」といった審美性を重要視して修復物を作製します。
部分的に気になるところを行ったり、虫歯になっていない歯でも削って修復するというケースもあります。
日本審美歯科協会は、あくまでも本来の機能を取り戻すことが前提とし、その年代にふさわしい口元の健康美を求めるもであることと提唱していますので、「美容整形」とは異なります。
歯を動かすことはなく、修復物の作製期間だけで済みますので、約2週間~半年程度と言われています。
歯列矯正に比べてとても早く治療が終わるため、人前に出る機会があり「できるだけ早く歯を綺麗にしたい」といった事情のある方は、矯正治療を受けるよりも早く美しい口元を手に入れることができるでしょう。
歯の状態はさまざまです。虫歯の治療を期に、入れる修復物の形状や色を元の歯よりも美しくするということもありますが、審美性重視で希望される方の大半は、虫歯になっていない歯でも削って修復物で色や形を整えることになります。
一度削った歯質は再生することはありませんので、歯質が薄くなるということは、それだけ歯にダメージを受けやすくなるということです。
修復物で見た目は美しく整いますが、歯の寿命を縮めることになるかもしれないというリスクはあるということを加味して選択していただきたいと思います。
・オールセラミッククラウン
虫歯治療で歯を大きく削った場合に被せるための修復物(クラウン)の素材としてセラミック(陶材)を用いる方法です。
天然歯により近い白さとツヤを再現することができます。
・ラミネートベニア
歯の表面を一層削り、薄いセラミックを貼り付ける治療です。前歯を白くしたり、歯の形を整えたい時に適しています。
・メタルボンド
金属のフレームにセラミックを焼き付けて作製する修復物です。見た目の透明感や色調はオールセラミッククラウンに劣ります。内部に金属を使用しているため経年とともに金属部分が見えたり、金属イオンの溶出で歯茎が黒ずんでしまうことがあります。
まとめ
歯列矯正と審美歯科は同じように勘違いされることがありますが、治療の目的に大きな違いがあるということがお解り頂けたと思います。
治療開始後に「こんなはずじゃなかった」とならないためにも、ご自身のライフスタイルや目的に合わせてじっくり検討していただき、治療方法を選択していただければと思います。