目立たず行える舌側矯正は痛い? 歯の裏側に付ける矯正のメリット・デメリット

22.05.26

ワイヤー矯正の中で「目だたない矯正」のひとつが舌側矯正です。裏側矯正やリンガル矯正とも呼ばれます。
装置が歯の内側に入っているので、周囲に気づかれることなく矯正治療したい方に最適な方法です。
ですが、歯の内側にあることで「痛みはないの?」「邪魔にならないの?」と不安に思われる方もいるでしょう。
そこで今回は舌側矯正について詳しくご紹介します。矯正治療をお考えの方や装置の選択を悩まれている方はぜひ参考にしてください

舌側矯正とは

その名の通り、装置が「舌側」に向けて歯の裏側に取り付けられる矯正方法です。
従来のマルチブラケットワイヤー法は「ブラケット」という小さな装置を歯1本1本の表面に取り付け、それらをワイヤーで連結して固定し、ワイヤーの力で歯を並べたい方向へ誘導します。
細かな動きに対応でき、さまざまな歯並びに対応できるワイヤー矯正の特性をそのままに、装置が見えることなく治療できるというのが舌側矯正の最大のメリットです。

ハーフリンガル矯正

上の歯列だけ舌側矯正を行い、下の歯列は従来の表側矯正にするという方法もあります。これを「ハーフリンガル矯正」といいます。下の歯はお口が開いても唇で隠れて見えにくいことが多いので、お口を開けた時に目立つ上の歯だけ内側に付けます。上下ともに舌側矯正をするよりも治療費が安くなることがメリットです。
ただし医院の方針によっては、裏側矯正を行っていてもハーフリンガルは行わないということもありますので、ご希望の場合は事前に確認が必要です。

舌側矯正と表側矯正の違い

歯列はアーチ上をしていますが、歯の表側よりも裏側の方がアーチが狭く、さらに見えにくい場所にあるので、ブラケットを付けるのは至難の業です。高度な技術力が必要となる治療ですから、矯正歯科専門の歯科医師であっても裏側矯正ができる歯科医師はそう多くありません
また、歯の裏は表側に比べてブラケットとブラケットの間が狭くなります。その分つなぐワイヤーは短くなり、舌側矯正のワイヤーの方が歯に強い力が加わりやすいため、表側矯正よりも弱い力での調整が必要です。このような理由から、舌側矯正の治療費は表側矯正に比べて費用が高く設定されていることがほとんどです

【ワイヤー矯正の相場】

・表側矯正
 70万円~110万円
 ※透明やセラミックのブラケット、ホワイトワイヤーにするとさらに高くなります

・舌側矯正
 90万円~140万円

・ハーフリンガル矯正(上が裏側矯正、下が表側矯正で行う矯正方法)
 90万円~130万円

舌側矯正は痛いのか?

舌側矯正は目立ちにくいので矯正していることは気づかれにくいのですが、装置が内側にあることでデメリットになることもあります。そのひとつとして考えられるのが「痛み」についてです。矯正治療と言えば痛みは気になるところだと思いますので、舌側矯正によって起こる痛みについて詳しくご紹介します

調整時の痛み

これは舌側矯正に関わらず起こるのですが、動的治療のために調整を加えて数日は、歯の根っこ周辺の組織も動きますので、鈍い痛みを感じることがあります。動きが落ち着き組織が修復されれば痛みは徐々に緩和するため一時的な痛みです。ずっとズキズキするような痛みかたではなく、歯が浮いたような鈍い痛みで、噛んだ拍子に起こることがほとんどなので、緩和するまで食事を柔らかいものにするなど工夫してしのぎましょう。

装置が当たる痛み

装置が内側に付いているので、舌に当たることはあります。特に歯並びの凹凸が大きい初期段階では、ブラケットもワイヤーもいびつな弧線となっているので、舌が当たりやすくなります。ブラケットの突起部や、ワイヤーの結紮部で舌が傷ついたり、その傷が引き金になって炎症(舌炎)を起こせばしばらく痛みが続くでしょう。

舌側矯正のメリット・デメリット


舌側矯正には痛みの他にもデメリットになることもありますが、他の矯正方法に比べてメリットもたくさんあります。矯正装置は痛みの度合いだけでなく、さまざまな特徴からご自身に合った方法で選ぶことが大切ですので、選ぶ際の参考にしていただければと思います

舌側矯正のメリット

・他人に気づかれにくい
装置が表から見えないので、矯正中であることを気づかれたくない方や、人前に出る機会の多い職業の方などにおすすめです。

・矯正後の後戻りのリスクが少ない
歯並びが悪くなった原因のひとつとして、舌で前歯を押したり、歯と歯の間に突出させる癖があります。舌側に装置が入ることで舌癖ができないことで矯正中に悪習癖が改善されることがあります。装置撤去後に習癖によって歯並びが後戻りするリスクを大幅に減らすことができます。

・虫歯になりにくい
矯正装置が入ると食べかすや歯垢汚れなどが付きやすくなってしまいますが、歯の裏側は唾液が当たりやすく虫歯になりにくい環境なので、矯正装置によって虫歯のリスクが高くなる事態を起こしにくいです。

・スポーツや部活も取り組みやすい
転倒やぶつかったりしても、表側矯正よりも口腔内をケガすることが少なく済みます。唇周辺は使いやすいままなので、楽器の演奏などもしやすいのではないでしょうか。

・食事がしやすい
表側矯正に比べて繊維質のものが引っかかりにくいです。もしも引っかかってしまったとしても、表側に比べて食物残渣が見える心配もありません

舌側矯正のデメリット

・治療費が高い
先ほども少しお話しましたが、矯正方法の中で一番治療費が高い装置となる傾向があります。舌側矯正では、事前に患者さまの歯列にピッタリ合う装置を模型上で作成する必要があり、表側矯正にはない工程や精巧な技術力が求められます。治療工程が増えることや、高度な知識と技術力、症例数の多さ(経験)が必要となるため、その分治療費が高く設定されています。

・発音に支障をきたすことがある
舌側に装置があることで、常に舌が装置と当たります。慣れるまでは違和感を感じやすいですし、舌を歯の裏側に当てて発音する言葉(さ行、た行、ら行など)が出しにくくなりがちです。空気が抜けたような活舌になってしまうので、相手が聞き取りにくいと感じるかもしれません。

・適応できない歯並びがある
反対咬合など、装置に歯が当たってしまう咬み合わせになっている方は、装置が外れてしまう可能性が高く、適応できないと診断されることがあります。ハーフリンガルにすれば可能な場合もありますので、対応できるかどうかは歯科医院に相談してみましょう

まとめ

舌側矯正は表側矯正と同じように細かく歯を動かすことができ、且つ矯正していることに気づかれずに矯正治療を行うことができます。ワイヤー矯正の装置が目立つことがネックになっている方ににおすすめの方法ですが、歯並びによっては適応外であったり費用が高いなど、要検討となる特徴もあります。最近ではブラケットが薄い形状で凹凸の少ないタイプ(インコグニート、クリッピーLなど)も開発されていますので、ご希望の方は取扱い医院を探すのも痛み対策のひとつです。ただし舌側矯正は導入医院事態が少ないので事前にリサーチしておきましょう

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