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顎関節症の治療法として歯列矯正は有効な方法か?
21.12.30
お口が開きにくい、開けると痛んだり音がするといった、顎関節の不具合をお感じになる方は、顎関節症の可能性があります。原因が分かりにくいため、どこの病院に罹ったらよいのか分かりにくいというお声を耳にすることがあります。
顎関節症は歯科での診察が可能です。そこで矯正治療で歯並びや噛み合わせを整えれば顎関節症が治ると思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は顎関節症の治療方法として歯列矯正が有効的な方法であるか解説します。
症状にお悩みでどこを受診しようか迷われていた方はぜひ参考にお読みください。
歯並びが悪いと顎関節症になるの?
顎関節症の原因のひとつとして「噛み合わせの悪さ」が挙げられます。確かに、噛み合わせにズレがあれば、噛めている場所とそうでない場所が生じるため、負担が大きい場所が起こります。
咬合圧バランスが崩れていれば、お口周辺の筋肉を使うバランスも崩れるため、筋肉の緊張などから顎関節にも負担がかかってしまうことが考えられなくもありません。
そのため、顎関節症治療や予防のために歯列矯正を希望される方もいらっしゃいます。
歯並びを治せば顎関節症も治るのか
結論からいうと、歯列矯正をすれば顎関節症が治ることもありますし、治らないこともあります。
歯並びが悪くても顎関節症で無い人もいます。逆もしかりです。
また、顎関節症は女性に多いというデータがありますが、女性の方が歯並びが悪い割合が高いということはなく、男女ともに不正咬合は起こります。
そのため、「顎関節症を治すために矯正治療をする」というよりも、「矯正治療で噛み合わせが整ったことがきっかけで顎関節症の症状が緩和するケースはある」と考えるのが妥当です。
では顎関節症を治すのに「矯正治療は意味がないのか」といえば、それも違います。
今は問題がなくても、噛み合わせのズレによる経年的な負担や虫歯・歯周病のリスクの高さなど、顎関節症を発症する可能性はゼロではないからです。
顎関節症が治るかもしれない可能性もあり、将来的に発症するかもしれないリスク軽減にはつながる可能性があるので、顎関節症でお悩みの方は、矯正歯科にもご相談されてみてください。
顎関節症とは
・顎がカクカクと雑音(クリック音)がする
・開口時に顎が痛む
・開口したくても大きく開かない
といった症状がある場合、顎関節症と診断されます。
顎から首や肩の痛みも伴う方もおり、歯科を受診するということに結び付かない方っもいらっしゃるかもしれません。
顎関節症は一般歯科もしくは症状がひどい場合に大学病院の口腔外科が担当することもあります。
矯正歯科は痛みや開口障害を解決する治療はできませんので、そのようなお困りごとがある場合は、まずは一般歯科へご相談ください。
顎関節症はどうやって起こるのか
人体の関節部分は可動するために、受け皿側の骨と動く側の骨があり、そこに「間接円板」という骨と骨とのクッション的役割の組織があります。顎関節も同じで、側頭骨の間接窩と下顎骨の顆頭という部分を間接円板が覆っています。
間接円板は前方と後方に厚みがあり、へこんだ中央部分で顆頭を安定させていますが、何らかの原因で関節円板が前方へズレてしまうことがあります。
この症状を「関節円板前方転位」といい、顎関節症の約60~70%に認められる症状です。
関節を戻す際にカクカクしたり、音が鳴るのはそのためです。
また、間接円板が伸びきってしまい元の位置に戻らなくなってしまうこともあり、顎関節を動かしたくてもロックされて動かせないと、開口障害が起こります。
顎関節症の原因を考えてみましょう
顎関節症は、歯並びの悪さや噛み合わせの悪さが原因で起こるというような1つの因子から起こるのではなく、さまざまな因子があり、それら複数が重なって起こる多因子性の症状だといわれています。
そのため、歯並びの悪さ、噛み合わせの悪さはその1要因という訳です。他の因子もご紹介しますので、あてはまる因子があるか確認してみてください。
顎関節の関節円板の転位が起こっている
顎関節は頭部側と顎側の部分を「間接円板」がクッションの役割をして動きますが、その間接円板の位置にズレが起こっていると顎関節に痛みや開口障害、カクカクというようなクリック音などさまざまな症状を起こします。
関節円板がなぜズレてしまうのかは、明確な原因は分かっていませんが、顎関節の顎側(顆頭)では赤色骨髄から黄色骨髄へと性質を大きく変化させたり、第二大臼歯が萌出したりする時期を考えると、顎関節症が若者に多い時期も関係するかもしれません。
食いしばりや歯ぎしりをする
就寝中、無意識に歯ぎしりや食いしばりを起こすという人をよく耳にします。
歯ぎしりや食いしばりが歯にかけている力は、起きている時に食事等で噛む際にかかる圧力と比べて2~4倍あるといわれて
います。
歯ぎしりや食いしばりによって過度な負荷が顎関節にかかることで顎関節症を起こす確率は、約50~70%とされており、高い発症因子になっている可能性は高いです。
そもそも歯ぎしりや食いしばりは、不正歯列による噛み合わせのズレから起こすともいわれているので、ここで噛み合わせの悪さとの多因子性が考えられます。
偏った咀嚼、頬杖をつく、うつぶせ寝をするなどの生活習慣がある
偏った咀嚼は、よく噛む方の筋肉が異常に発達してしまうことがあります。
また、頬杖やうつぶせ寝などの外因的圧力によって、顎や歯並びの歪みが起こるため、噛み合わせのズレも起こしてしまいま
す。これらもまた、歯ぎしりや食いしばりに繋がったり、不正歯列につながったりする要因となります。
頭頚部、口輪筋など筋肉の過度の緊張
首や肩のコリ、お口周辺の口輪筋などの筋肉の過度の緊張が顎関節に負担をかけてしまうことが要因となることもあります。
これらの筋肉の緊張は、噛み合わせのズレや悪い生活習慣から起こすこともあるため、多因子性の要素のひとつとなります。
まとめ
顎関節症は原因が多因子に渡ること、お解り頂けたと思います。矯正治療で歯並びや噛み合わせを治療しただけでは、顎関節症の直接的な改善に繋がらない。
もしくは再発も考えられますので、さまざまな角度から原因を探ったり、治療を行う必要があります。
とはいえ、歯並びの悪さが因子のひとつとなることも確かですので、一般歯科でご相談いただき、痛みや開口障害などの治療と併せて、ひとつの解決策として治療をご検討いただければと思います。