矯正 基礎知識

成人矯正・小児矯正の治療法別 歯列矯正にかかる期間の目安はどれくらい?

21.10.31

一度開始すると年単位で治療期間がかかる矯正治療。簡易的な治療でも半年から長ければ2、3年かかることもあります。
「何年も矯正装置を付けていられるか不安」という方もいらっしゃると思いますので、今回は歯列矯正における治療期間について、成人矯正・小児矯正それぞれ詳しくご紹介します。
歯列矯正は歯並びや用いる矯正方法によって治療期間が異なることもありますので、治療を検討されている方は、ご自身に合う治療方法をお考えになる際の参考にご覧ください。

矯正治療はなぜ治療期間が長くかかるのか

矯正治療したいけど、矯正治療は長いというイメージから「引っ越しするかもしれない」「結婚式の予定がある」「部活動に支障はないの?」など、さまざまな理由で、治療期間がいつまでになるのか気になる方も多いようです。
「調整期間を短くしたら早く終わるんじゃないの?」というご質問もよく耳にします。
しかし、歯列矯正治療は急いで歯を動かせない理由があります。ですから少しずつ力を加えて動かすことしかできず、治療期間が長くなるのです。

  1. 矯正治療で歯が動くしくみを解説
  2. 歯は1本1本、歯槽骨(しこうこつ)という顎の骨の穴にあり、歯根膜(しこんまく)というクッションの役割をする組織で守られています。
    矯正装置によって歯に圧力がかかると、動く方側の歯根膜が縮み、反対側が引き伸ばされます。歯根膜は一定の厚みを保つ性質があるため、元の厚みに戻ろうとする作用が働きます。
    また、押された側の顎の骨は吸収され、引き延ばされて隙間が大きくなった側の骨は新しく修復されます。これを繰り返すことで徐々に歯が動きます。

  3. 大きく力を加えたら早く動かないの?
  4. 大きな力を加えたら歯が早く動くのかといったらそうではありません。
    もしも無理な力をかければ、歯の神経がダメージを受けてしまったり、歯根が溶けてしまったり、歯茎が炎症を起こしたりといっ
    たトラブルを起こすことも考えられます。
    歯がダメージを受けてしまったら、歯列矯正どころか歯を残せなくなるような自体を招くこともあるので、そのようなことがないよう、治療はゆっくり時間をかけて歯を正しい位置へ誘導していく必要があります。

  5. 子どもの矯正治療期間は大人とは違います
  6. お子さまが矯正治療を行う場合は、歯の萌出状態や年齢によって大人とは違う装置を用いて行うことがあります。
    顎の成長や歯が動く期間も異なりますので、治療期間も大人とは異なります。
    また、成長や歯並びの度合いによって治療期間は差があります。

    【治療法別】成人矯正にかかる期間

    成人矯正は方法によって治療期間に差があります。また、個々の歯並びの度合いによっても期間が異なりますので、平均的な治療期間をご紹介します。あくまでも目安になりますが、治療方法の選択等の参考にされてください。

    1. 表側矯正:約1~3年
    2. 歯列全体にブラケットとワイヤーの装置を装着し、ワイヤーが引っ張る力で正しい位置へ歯を誘導する方法です。

    3. 裏側矯正:約1~3年
    4. 矯正装置の作用としては表側矯正と同じです。歯列全体にブラケットとワイヤーを装着しますが、装置はすべて歯の裏側に装着します。

    5. マウスピース矯正:約1~2年
    6. 歯に圧力がかかるように1回目から最終段階まで設計されたマウスピースを定期的に交換しながら歯を動かしたい方向へ誘導する方法です。

    7. 部分矯正:約半年~1.5年
    8. かみ合わせにさほど問題がなく、全体的に動かさなくてもよいと診断された場合、気になるぶぶんだけに装置を作用させる方法です。動かす範囲が少ないため、他の方法よりも治療期間は短くなります。

    9. 保定期間
    10. 矯正装置で歯を動かす期間終了後も「保定期間」を設けます。保定装置を付けて歯が後戻りしないよう安定させる期間が約1年ほど必要になります。場合によっては固定式の簡易的なワイヤーを歯の裏に付けたまま長期間過ごすケースもあります。

      【治療法別】小児矯正にかかる期間

      小児矯正治療は、昨今では永久歯列になる前から開始する1期治療から開始するケースが増えています。その後必要であれば、永久歯列になってから大人と同じ治療方法である2期治療を開始するという流れです。

      1. 1期治療とは?
      2. 永久歯の歯並びが正しい位置に整って生えるかどうかは、乳歯に時期の顎の成長が大きく関わっています。
        最近では食の欧米化から噛む回数の減少なども関係し、顎の成長が弱いお子さんが増えています。
        そのため、まだ乳歯の時代から顎の成長を正しい方向へ誘導する装置を用いることで、永久歯が正しい位置に生えるために必要な大きさ・形に成長を促すことができます。これが1期治療です。装置は歯科用プラスチックやバネを用いた拡大装置や、マウスピース状のものなどがあり、対象年齢は5、6歳ころから12歳ころまでのお子さんが対象となります。

      3. 2期治療とは?
      4. 1期治療が順調に進み、永久歯の生え変わりが問題なく行われた場合は、永久歯になって矯正治療する必要がない場合もあります。しかし、1期治療だけでは完全に整和なかった場合は、永久歯列になってから2期治療を開始することになります。2期治療は大人の歯列矯正と同じ装置を用います。
        ただ、乳歯の時期に矯正を行っているため、永久歯列になって初めて矯正治療を行う人に比べて整う期間は早いケースが多く、治療期間が短く済むことも多い傾向にあります。

      5. トータル的には治療期間は長い?
      6. 「子どもの歯列矯正にかかる期間は長い」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。確かにトータル的に考え、5歳から始めることを考えると「長い」と感じることもあるでしょう。
        ですが、1期治療はある程度顎の成長が完了したら一旦終了し、永久歯との交換時期様子を見る期間があります。また、1期治療は歯を動かすわけではありませんので、痛みを感じるようなこともありません。
        2期治療が必要なくなる可能性を考えれば治療期間は短いですし、もしも2期治療が必要となった場合でも、治療期間が短く済むとなれば、お子さまの負担も軽くなります。

        まとめ

        成人矯正にかかる期間は個々の年齢や歯並びの状態によって異なります。軽度であれば当然早く済みますし、重度になれば動かす度合いが増えるので治療期間は長くなります。
        またそこに、装置の種類によっても少しずつ差があり、部分矯正が一番短く、表側矯正やマウスピース矯正に比べて裏側矯正
        は若干長くなる傾向があります。小児矯正に関しては、顎の成長段階であるかどうかも関係するため、矯正治療期間はさらに年齢や成長度で差があります。
        治療期間が気になる方も多いと思いますので、矯正治療を検討される際には初回相談などを利用し、大まかな治療期間を確認して治療を開始されることをおすすめします。

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