歯の寿命に差が?! 「保険」と「保険外」の根管治療はどう違う

23.07.10

日本の歯科治療には「保険診療」と「保険外診療」があります。保険証を使って受ける治療は、本来かかるはずの費用を全顎支払わなくてよいため、負担が軽くなる仕組みです。
一方の「保険外診療」は全額自己負担ですが、保険診療で決められている薬剤や修復物以外の治療を選択して受けることができます。この2つは費用や用いる材料が違うだけではありません。特に根管治療においては、歯を温存できるかどうかの明暗を分けることになる可能性もあります。
日本の歯科治療には、保険治療と自費治療の2つの仕組みがあります。
今回は、保険と保険外の根管治療では、どのような差があるのかについて解説していきます。

保険の根管治療と保険外の根管治療の「差」とは?


まずは「保険の根管治療」と「保険外の根管治療」では、どのような違いがあるのかについて、おおきく3つに分けて解説します。

内部組織の診断の差

保険で行う治療では、根管や内部組織の状態を確認するために主にレントゲン撮影を行います。
保険診療でのレントゲンは2次元的な画像確認になるため、言ってしまえば撮影者の技量もかんけいしてきます。根っこ部分がしっかり移っていない、角度が悪く確認しづらいというケースもないとは言えません。特に臼歯は複数根で2~3本あることがほとんどで、撮影角度によっては見えづらい根があることもあります。
その点保険外の根管治療では、CT撮影を行う事が多く、3次元的に歯や骨の状態を確認することができます。そのため根管の本数はもちろんのこと、内部組織や骨の状態も診断しやすくなり、より精密な治療を行うことができます。

使用できる道具の差

根管治療は再発を防ぐために、細菌感染した根管内を出来る限り無菌状態にして充填しなければなりません。保険適応の範囲で使える治療法では、まずは虫歯を除去したあと、そのまま歯髄を除去します。その際、根管内には唾液を介して細菌が侵入する可能性もあり、なかなか無菌状態にすることは難しいのが現状です。保険外診療では「ラバーダム防湿」という、天然ゴムでできたシートを口に被せ、治療する歯だけをシート状に露出して処置を行うため、唾液の侵入を防いで細菌感染を予防し、処置もスムーズに行うことができるので患者の負担も軽減できます。
また、根管内を清掃するための「ファイル」という細い器具も、保険診療で用いるものは、細すぎる根管全体を清掃できるかというと、難しい場合もあります。複雑な形状をしている根管の場合、保険外診療で用いられる「ニッケルチタン製」のファイルは弾力としなりがあることから、細く曲がった根管の清掃にも適応できます。歯髄の取り残しや、根管の先端を突き抜けてしまうなどの事故も予防することにつながります。

使用する薬剤の差

根管内の戦場と消毒を何度か繰り返し、綺麗な状態になったら、歯髄の入っていた空洞に薬剤を充填します。保険診療では「ガッタパーチャ」という、細井ゴム状の充填剤を根っこの先に詰めながら隙間を埋めていきます。隙間を作ってしまうことがゼロではないことや、もしも歯根の先端からはみ出してしまうようなことがあれば、異物と判断されて炎症を起こすこともあります。
それに対して保険外診療では、ガッタパーチャ以外の薬剤も用いることができるため、殺菌効果のある薬剤の入った充填剤などを用いて歯根の先端部分まで隙間ができないように埋めることができます。これにより、隙間から菌の侵入を予防したり、根管内で細菌が繁殖するのを防ぐことができます。

治療終了までにかかる時間・期間の違い

保険適応の治療では、1回の治療で進めることができる治療が決まっているため、工程によっては1回もできるものも、数回に分けて行わなければならないこともあります。保険適応外であれば、歯科医院ごとに治療工程を決めることができるため、1回にじっくり時間をかけることができます。何度も通院するということは、何度も根管内を清掃するために触りますから、それだけ細菌感染する可能性も増えます。保険外の根管治療は細菌感染のリスクを減らし、通院する回数も保険治療よりも早く終わることができます。

治療費の差

保険の根管治療は、1本あたり数千円が相場で、洗浄で通院時には数百円ということもあります。
それに比べて、保険外の根管治療は前歯でトータル8万円前後、奥歯で10万円~15万円くらいかかることもあります。費用だけで考えると、保険適応を選択する方が多いと思いますが、保険治療は再発することもよくあるので、再治療を繰り返しているうちに、トータルで保険外治療よりも費用がかかったり、最悪のばあいには歯を抜歯することになり、入れ歯やブリッジ、インプラントなど別の治療が必要になるリスクも増えてしまいます。

治療後の被せ物の違い

根管治療が終わった後は、人工歯の被せ物を作製します。その際、保険適応の装置の場合、内部の土台や被せ物は銀の金属を用いることが決められています。前歯の場合も、内側が金属で目立つ表面だけ歯の色に似た素材で作製した装置になりますが、素材も色の幅も保険外のものよりも多くなく、満足のいく仕上がりにならなかったと感じる方もいるかもしれません。また、保険の被せ物は銀が経年劣化で錆びたり、イオンの流出によって歯茎が変色したりといった不具合を感じる場合もあります。痛みがなくても装置の作り変えが必要になることもあるのです。
保険外の場合には、ゴールドやグラスファイバーといった親和性も良く隙間もできにくい土台をもちいることができますし、被せ物も丈夫で歯の色や質感に近いセラミックやジルコニアなどを用いて作製することができますので、見た目の美しさはもちろん強度や適合性のよい素材で仕上がることができます。

まとめ

保険治療と保険外治療の差は、費用面だけで決めずに、さまざまな要素を加味してお考えいただきたいと思います。保険治療も、もちろん痛みや炎症を解消し、できる限りの治療を行いますが、保険で取り決められた方法の範囲内でおこなうことになるため限界があります。また数年後には同じ治療を繰り返す事になる可能性も秘めているのです。
保険外は全額自費となるためとても高額に感じるとは思いますが、その先永く健康な歯を維持するためにも、どのような治療にするか、十分ご検討の上選択されることをお勧めします。

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