矯正 お悩み

大人の矯正 歯周病があると歯科矯正はできないのか?

23.03.29

歯科矯正治療を受ける際、虫歯や歯周病がある場合には、すぐに矯正治療を受けることができません。
特に歯周病は歯ぐきの炎症が納まるまで時間がかかることも多いため「すぐにでも始めたい」「〇〇までに終わらせたい」と思っていた方にとっては、治療開始や終了の目途が難しくなることもあるでしょう。
そこで今回は、歯科矯正と歯周病との関係性を詳しく解説します。特に関連性があるのが大人になってから歯科矯正を検討されている方です。ぜひ是非参考にお読みください。

歯周病のまま歯科矯正を受けるリスク


歯周病は歯ぐきが炎症を起こして出血や排膿、悪化すると歯を支える顎の骨を溶かしてしまう歯ぐきの病気です。歯科矯正で歯を動かす際、歯の周辺組織に軽い炎症が起こるため、歯周病を発症している状態で歯科矯正を行うと、思わぬトラブルをきたす可能性があります。その結果考えられるリスクは大きく分けて2つです。

歯肉退縮が起こる可能性がある

歯周病は顎の骨を溶かしてしまうため、骨が減少した分歯ぐきが痩せてしまいます。そのため歯ぐきの位置が動かしていない部分よりも下がってしまい、歯が長くなったように見えたり、歯と歯の間に隙間が目立ってしまうことがあります。

歯が脱落してしまうことがある

歯を支える顎の骨の減りが大きいと、歯を動かすために力が加わることも相まって、最悪の場合歯が抜け落ちてしまうリスクもあります。そのようなリスクが考えられるほど進行している歯周病の場合には、歯科矯正をすること自体できないと診断されることが多いです。

上記2点のようなリスクを起こらないよう、もしくは起こったとしても最小限にするためには、歯科矯正開始前に歯周病の治療を行ってから治療開始することが大切です。

なぜ歯周病のまま歯科矯正できないのか


歯周病は歯ぐきの病気で「歯を動かすこととどんな関係があるの?」とお考えの方もいるかもしれません。歯周病を罹患したまま歯科矯正をうけることがなぜ難しいのか、歯周病のメカニズムを知っていただくことでご理解いただけると思います

歯周病とは

歯周病は、歯を支える歯ぐきや顎の骨に炎症が起こる病気です。原因は歯垢(プラーク)というネバネバとした歯の表面にこびりつく汚れの中に潜んでいる歯周病の原因菌です。歯垢は食事やおやつ等から摂取する糖分や歯磨きが不十分な状態が続くとどんどん増え、同じく細菌数も増加します。歯周病の原因菌が産出する毒素が歯ぐきにダメージを与え、炎症を引き起こします。

・初期は「歯肉炎」
歯周病は初期段階を「歯肉炎」と呼びます。初期症状は痛みや腫れ、出血などはほとんど無いので、気づくことは少ないです。よく見ると歯ぐきのV字部分が発赤し、少し丸みを帯びています。まだ歯ブラシの充て方など改善すれば、自身で症状改善できるレベルです。

・出血や排膿を起こし始めたら注意!
歯周病は一般的に出血を起こし始める段階まで進行したら注意が必要です。歯周病が悪化すると歯ぐきの炎症が大きくなり、歯周ポケットが広がってしまうため、さらに汚れが溜まりやすくなる悪循環を起こします。汚れがさらに残りやすくなりどんどん進行して、排膿することもあります。炎症が歯根部分に及ぶと顎の骨が溶かされてしまい、歯を支えきれなくなって、最悪の場合歯が抜け落ちてしまうこともあります。

歯周病のまま歯科矯正できない理由

歯周病のまま治療ができない理由については、先述したリスクを起こさないためです。その中でも「歯が脱落するリスク」というのは大きい理由のひとつです。また、顎の骨がしっかり残っている場合でも、歯周病のまま装置を付けることで歯周病のリスクはさらに高まります。ワイヤー矯正は装置が邪魔して付ける前よりも歯磨きしにくくなりますし、マウスピース矯正で取り外して歯磨きできたとしても、20時間以上歯ぐきまで覆う装置をするわけですから、歯周病菌の増加を促しかねないのです。

・歯が周辺組織が炎症しながら動く
そもそも、健康な歯ぐきであっても、歯科矯正することで内部組織は若干の炎症を起こしながら歯を動かしていきます。動かしたい方向に圧力をかけると、歯に押されて歯ぐきが炎症を起こして無くなります。また、以前歯があった部分の組織は少なくなるため増加します。これを繰り返して歯が動いていくため、歯科矯正するということだけでも炎症を伴います。そこに歯周病で歯ぐきが弱っていれば歯周病が悪化する恐れがあり、歯が動いた後装置を外すと歯が安定せず、後戻りしやすかったり、歯が抜け落ちてしまう可能性が考えられます。これも歯周病のまま歯科矯正できない理由のひとつです。

歯周病でも進行度によっては歯科矯正ができる


歯周病があるからといって、必ずしも歯科矯正が受けられないということはありません。歯周病があると診断された場合でも、進行度や改善度によっては歯科矯正を行うことができます。

軽度の歯周病であれば歯科矯正は可能

歯周病の症状が軽度の場合には歯科矯正は可能です。とはいえ、矯正治療中は歯磨きがしにくくなったり、装置が入ることで歯周病菌が増加しやすい環境になるため、歯磨の改善などを行う必要があります。歯周病は自覚症状のないまま進行する病気です。そのため見た目の炎症や出血の有無等だけでなく、治療前の検査でレントゲン撮影などを行い顎の骨の状態も確認し、問題ない場合には治療開始することができます。

歯周病が進行している場合の歯科矯正

事前検査で歯周病が進行していると診断された場合には、歯周病治療を先に行ってから歯科矯正を開始します。中には、歯並びの悪さが歯周病悪化の原因になってしまっているという方もいるため、歯周病治療の一環として歯科矯正を行うケースもあります。ご自身に自覚症状がある進行した歯周病の方でも、まずは諦めずに矯正歯科へご相談ください。

まとめ


歯周病は日本人の8割が罹患しているともいわれる歯ぐきの病気です。特に成人の罹患率が高くなっています。最近では大人の歯科矯正希望者が多くなっていますが、歯周病が慢性化している人も増えており、歯科矯正開始前にしばらく歯周病治療が必要という人もいます。「早く治療を終えたい」という人も多いですが、歯周病治療が必要な場合には、装置による動的治療開始までの期間が必要になるため、思ったよりも治療期間が長引くこともあります。
矯正治療をお考えの方で歯周病も気になる方は、まず矯正歯科のカウンセリングを受けましょう!

                                   記事一覧へ戻る