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できれば抜きたくない! 抜歯・非抜歯矯正の特徴やメリット・デメリットとは
21.11.29
矯正治療といえば、歯を並べるためのスペース確保のために「抜歯」を行うイメージを持たれている方も多いのではないででしょうか?
ところが最近「抜かない矯正」や「非抜歯矯正」といった言葉を歯科医院のホームページやネット記事などで目にすることが増えています。抜歯はできれば避けたいと思うのが正直なところですが、中には「非抜歯矯正で出っ歯になった」とか「口が閉じなくなった」というような内容も目にします。
そこで今回、矯正治療における抜歯の必要性や、矯正治療において抜歯・非抜歯を分ける基準なども解説しますので参考にしてください。
なぜ矯正治療で抜歯することがあるのか
矯正治療で抜歯が必要と判断される理由は以下の4つです。
①歯を並べるためのスペース確保のため
②上下の噛み合わせを正しい位置に整えるため
③前歯の角度や位置を整えるため
④骨格的な突出を全体的に後ろに下げるため
歯はきれいに並んでいるだけではなく、上下左右に噛みあうべき歯が正しい位置にあることが重要です。
ですから4つの理由を抜歯でスペースを確保しなくても歯並びを矯正できるのであれば非抜歯でも矯正治療が可能ということになります。これらは治療前の精密検査で歯科医師が判断し、治療方法とともに提案されます。
スペース確保の方法について
歯並びの悪さの度合いは軽度~~重度と人それぞれです。とはいえどのようなケースであっても、正しい位置に整えるためのスペース確保が必要になります。具体的な方法を抜歯・非抜歯ともにご紹介します。
- 抜歯しなければならないケース
- 歯列を横に広げる「側方拡大」(非抜歯)
- 奥歯から全体的に後方へ下げる方法(非抜歯)
- 前歯を前方に移動させる方法(非抜歯)
- 歯を削ってスペースを作る(非抜歯)
歯が並ぶ場所である歯列弓に歯がデコボコに並んでおり、顎を広げてスペースを増やすことができない場合は、抜歯を行って歯が並ぶスペースを確保します。
一般的に犬歯の後ろにある小臼歯を上下左右対象になるようバランスよく4本抜歯することが多く、まれに上もしくは下だけ左右対称に2本抜歯することもあります。
小臼歯抜歯2本で約14mm~16mmの隙間が取れ、全体的に歯を並べるには十分なスペースになります。
細くU字型の歯列弓の場合、横方向に顎を広げてスペースを作る方法です。側方拡大1mmにつき約0.7mmの隙間ができるとされています。お子さんの場合には顎の成長を利用しながら広げることができますが、大人の場合は顎の成長は完了していますので、歯列弓だけを広げます。
歯列が内側に倒れている場合は拡大できるのですが、歯列が外側に倒れていたり、それ以上拡大すると全体的な突出感を生んでしまったり、骨から歯の根っこが飛び出てしまうような場合には広げることができません。
一番奥の歯から全体的に後方へ下げ、抜歯せずに歯を並べる方法で「インプラント矯正」といわれている方法です。
小さな「インプラントアンカー」を奥歯の上方の歯槽骨に歯茎の上から固定し、インプラントから奥歯を牽引する力が働き、歯を奥へ移動させます。
とはいえ、奥へ移動させられるスペースにも限界があり、日本人は約2~3mmほどのため、それだけではスペースが不足する場合には非抜歯で行うことが難しいケースもあります。
多くのスペース不足は、歯が並びきれず前にしわ寄せが来て突出することが多いので、前歯を前方に移動させてスペースを作る方法はあまり行われません。ただし、前歯が内側に倒れていることによってスペースが狭くなっている場合などに行われることがあります。
歯の側面をそれぞれ最小限の0.25mm以内で削り、全体的にスペースを作る方法です。両面削るとして0.5mm、24本の歯の13か所削って最大6.5mmの隙間を作ることができることになります。
その隙間で歯が並ぶ程度の重なりであれば行うことができますが、健康な歯質を削ることは歯の寿命を縮めることにも繋がるので、簡単にお勧めできる方法ではありません。
抜歯・非抜歯のメリットとデメリット
抜歯するにせよ非抜歯で行うにせよ、状況によってメリットとデメリットがあります。もしもどちらで行うこともできる場合はよく考えて選択するようにしましょう。
抜歯のメリット・デメリット
抜歯することで確実にスペースは確保できます。また、前突感を感じていた場合は前歯を奥に下げることができるため、出っ歯やEラインの改善にもつながることがあります。
ただし、矯正治療前に健康な歯であっても上下左右4本(場合によって2本)抜歯が必要となるため、すぐに治療開始できないことが予測されます。また、治療を受けるのが矯正専門医院の場合、抜歯適応の別の歯科医院や大学病院などで抜歯をすることもありますので、非抜歯よりも治療期間がかかることがあります。
非抜歯のメリット・デメリット
抜歯を行うことのストレス(痛み、回復期間、通院など)を感じることなく治療を始めることができます。
また、抜歯後の歯茎の回復期間がないため、精密検査・装置作製後はすぐに治療開始できます。
ただし、非抜歯はあくまでも歯を抜かずにスペースが確保できる歯並びであることが前提です。
スペース不足が重度であるのにも関わらず、抜かずに並べた結果、前方に突出感が出てしまったという事例もあります。
また、拡大装置でスペースを作る場合には、その分の期間や費用が多くかかることもあります。
歯を削るストリッピングを行った場合には、歯質が薄くなっている分神経が刺激を受けやすくなったり、虫歯になった場合はダメージが大きくなりやすいデメリットは考慮する必要があります。
まとめ
矯正治療を行う上で、抜歯するか非抜歯で行うかは、単に患者側の希望や歯科医師の治療方針だけで決めているのではないこと、お分かりいただけましたでしょうか?
どれくらいの度合いでスペースが足りていないのか、その隙間を確保するために抜歯せずに行うこともできるかを、精密検査の結果をもとに十分に診断し、患者さんにご提案されます。
また、拡大装置やインプラントアンカーなど、特別な治療技術を要する場合、どの矯正歯科医師でも行えるというわけではありません。
矯正治療は装置や方法がさまざまあり、医院によって取り扱いが異なります。治療を受ける歯科医院は事前に十分な説明を受けることが大切ですし、いくつかの医院のカウンセリングを受けてご自身に合う方法をお探しになることをお勧めいたします。