矯正 基礎知識

マウスピース矯正でなぜ歯が動かせるの? 装着するだけで歯が動くプロセス

23.09.24

歯列矯正治療において、目立たず、取り外しができるというメリットから希望者が増えているマウスピース矯正ですが「マウスピースでどうやって歯を並べるの?」と疑問のお声を耳にすることがあります。マウスピースを歯に装着するだけなので、本当にきちんと歯が並ぶのか心配になることもあるでしょう。
そこで今回、マウスピース矯正がどのようにして歯を動かすのかについて詳しく解説します。
マウスピースの種類や治療の流れなども併せてご紹介しますので、マウスピース矯正をお考えの方はぜひ参考にご覧ください。

マウスピース矯正とは


マウスピース矯正は、動かしたい歯の部分にマウスピースで圧力をかけ、歯を少しずつ動かす矯正治療です。現在の歯並びから整っていく流れを専用の機械でシミュレーションし、理想の歯並びへ段階的にすこしずつ圧がかかるような形状になったマウスピースを作製します。マウスピースを定期的に交換することで段階的に圧力がかかり、歯が動いていく仕組みです。
交換は1~2週間に1回のペースが多く、歯科医院へは1カ月半~2カ月に1回は受診して経過を確認してもらいます。(受診ペースは医院や個々のお口の状態によって変わります)

〇歯が動く仕組み

歯を動かしたい方向へ圧力がかかるように設計されたマウスピースを歯に装着します。圧力が罹った部分はその方向へ次の交換時期までに数ミリ動きます。次のマウスピースは、動いた位置からさらに圧力が罹るように緻密にに計算され作製されています。そのマウスピースを定期的に交換していきながら、徐々に歯を動かしたい場所まで誘導する仕組みです。
歯が動く場所のスペースが足りないと動かせないので、スペース確保のための処置が必要になることがあります。その際には、顎の拡大装置用いたり、歯を少しずつ削る「IPR法」や奥歯の抜歯といった方法の中から、歯科医師の診断によって患者さんに最適と思われる方法が提案されます。

マウスピース矯正治療の流れ

〇初診のカウンセリング

まずはどの歯科医院でもいきなり治療には入りません。患者さんの歯並びのお悩みやお口の拝見し、マウスピース矯正ご希望の場合に適応症例であるかどうかを確認し、費用の概算やおおよその治療期間などを説明します。
(歯科医院によって、カウンセリングはお話だけの場合や、顔貌の写真撮影、レントゲン撮影、口腔診察なども行う場合など、内容が異なります)

〇精密検査

矯正治療を行うには、歯並びだけでなく、噛み合わせの状況や骨格の診断などを細かく行うことが必要です。そのため、2次元画像のレントゲンだけでなく、3次元的な歯科用CTや口腔模型(石膏模型やデジタルなど)のデータを取ります。それらの資料を基に、歯科医師がどのように歯を動かしていくのか治療計画を立てます。
マウスピース矯正の場合は専用の口腔内スキャナー(iTero)で治療開始から終わりまでをシミュレーションすることが多いため、口腔内の型取りなどの負担を減らすことができます。

〇マウスピースの作製

口腔内スキャナーで取得したデータを基に、患者さんに合ったマウスピースを、開始時から終了時までの枚数を作製します。(インビザラインの場合)
作製し医院に届くまでに1カ月ほどかかるため、治療開始までに虫歯や歯周病にならないよう、口腔管理もしていただきながらお待ちいただきます。
(口腔内の形状が少しでも変わると、マウスピースがはまらない可能性があります)

〇歯を動かすためのマウスピース交換

マウスピースが届いたら治療開始です。定期的にマウスピースを交換し、少しずつ歯並びを整えていきます。
交換の間隔は歯科医師の指示に従い、1日決められた装着時間を守って継続して装着します。
治療期間は虫歯や歯周病のリスクもあるので、口腔を清潔に保つことや、定期健診も重要です。特に定期健診は予定通りに歯が動いているかだけでなく、口腔内は健康か、歯磨きは行き届いているかなどのチェックも兼ねているので、忘れずに受けるようにしましょう。

ワイヤー矯正との違いは?


ワイヤー矯正は歯の表面に1本ずつ「ブラケット」という小さな装置を取り付け、それらを形状記憶のワイヤーで繋ぐことで、ワイヤーの「引っ張る力」を利用して正しい歯列に歯を並べる方法です。

〇歯へのアプローチの違い

先ほどもご紹介しました通り、マウスピース矯正はマウスピースで動かしたい歯に圧力を少しずつかけて動かす仕組みになっています。ワイヤー矯正は歯に装着しているワイヤーが元の形状に戻ろうとする力で正しい位置へと歯を引っ張る力で動かしていく仕組みです。
1カ月に1度、歯科医師が徐々にワイヤーが戻るように調整を行います。

〇自己管理が重要

ワイヤー矯正は歯面に装着したままになりますが、マウスピース矯正は自身でも取り外しができます。そのため、ワイヤー矯正に比べると食事や歯磨きはしやすい装置です。
ただし、歯が動くために必要な決められた時間装着することを怠ってしまった場合、思ったように歯が動かなかったり、トラブルが起こっていても気づきにくいことで計画通りに進まない可能性もあります。「自己管理」はとても重要な治療です。

〇歯科医院への来院回数が少なく済む

マウスピース矯正は交換を自身で行うことができるため、順調に歯が動いているか等の確認として定期的に受診は必要ですが、ワイヤーのように毎月1回のペースよりも通院頻度が少ない傾向があります。
ワイヤー矯正は毎月1回、歯科医院で新たなワイヤーに交換し、歯の動きに合わせてワイヤーの調整が必要です。仕事や学校が忙しく、毎月通院が難しい方はワイヤー矯正よりもマウスピース矯正が適しているかもしれません。

まとめ


マウスピース矯正はワイヤー矯正のように「引っ張る力」でなく「押す力」が主な装置です。ですので、あまりにもスペースが足りない場合や、骨格の歪みがある場合などは、適応できない場合もあります。
また、マウスピース矯正は取り外せる事がメリットでもありデメリットになることもあります。適応の歯並びであるかどうかはもちろん、ご自身のライフスタイルに合っているかどうかも加味してご検討されてください。

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