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インプラントと天然歯の違いについて知っておいてほしいこと
22.10.30
歯を失ってしまった時の修復方法のひとつとして「インプラント治療」を検討する人も増えています。
入れ歯やブリッジとはどのように違うのでしょうか。
どんな治療なのか分からないため「保険適応外で高い」「外科手術が必要」など不安にお思いの方もいるのではないでしょうか。そこで今回、インプラントと天然歯の違いについてご紹介します。
まずは天然歯との違いを十分に理解していただき、その上で治療方法選択のヒントにしていただければ幸いです。
天然歯にあってインプラントに無い特徴とは?
入れ歯やブリッジも喪失部分を補う修復方法ですが、人工歯を「歯ぐきよりも上」で残存歯と固定します。しかしインプラントは人工歯根といわれる「インプラント体」を顎の骨に埋入して歯の根っこ部分から再現します。そうすることで入れ歯やブリッジにはない美しい見た目の再現と噛み心地の良さなど、天然歯に近い機能を発揮してくれるのです。
とはいっても天然歯には、インプラントではどう頑張っても再現できない特徴があります。それらを3つご紹介します
〇歯根膜がない
天然歯は顎の骨にある歯槽骨という穴に植立しており、「歯根膜」というごく薄い膜とシャーピー繊維という組織がクッションの役割をして、歯が直接骨に当たらないようにしています。噛んだ時の圧力を吸収してくれることで、固いものでも痛まず噛むことができています。
しかしインプラントにはそのような歯周組織がないため、噛んだ時の圧力が直接あごの骨に伝わります。そのため噛み合わせの調整など十分配慮しておかないと、固いものなどを噛んだ際に人工歯が割れてしまったりといったトラブルにつながってしまうので注意が必要です。
とはいっても、歯根の再現で歯を支える力や固いものを噛む力、また顎の骨に咬合圧を伝達できることで、入れ歯やブリッジよりも固いものが噛めますし、食事も美味しく感じることができますから、修復方法の中では一番咬合圧に強い装置です。
〇炎症を起こしやすい組織構造
天然歯は歯肉と「歯肉繊維」で繋がっており、セメント質という歯の根っこ表面部分にくっついています。歯肉繊維は歯根に対して垂直にくっついていますが、インプラントの場合はこの繊維が装置に対して水平に走っており、インプラントの入口部分で密着している構造になっています。そのため歯肉とインプラントが剥がれやすいことから、天然歯に比べて細菌が侵入しやすくなってしまいます。一度炎症を起こすと天然歯の歯周病よりも早いスピードで進行し「インプラント周囲炎」を起こしてしまうため、インプラント治療後は十分なメインテナンスを継続することが大切になります。
〇血液供給が少ない
インプラントは人工物なので、天然歯のように血液供給を受けることができません。天然歯は顎の骨や歯肉、歯根膜から血液供給を受けることで固さや歯の健康度を維持していますが、そのような栄養供給がないのです。
また、歯周ポケット内部に血液成分「好中球」があることで細菌に負けない組織を維持する働きをしますが、血液供給が少ないためその働きも弱く、感染に対する防御力が弱い上に細菌が侵入しやすい組織となれば、天然歯よりも炎症を起こしやすいということなのです。
治療後、適切なメインテナンスの継続が重要!
損失歯の修復方法の中では最も天然歯に近いとされているインプラントであっても、天然歯の機能性や美しさに勝ることはできません。しかし何らかの要因で永久歯を失ってしまった場合、その隙間を放置していることのほうがさまざまな弊害につながるので、修復することは必須です。
そこでどの修復方法を選ぶかというところでインプラントの機能性・審美性を求めて選択される方がほとんどだと思います。
ただし、インプラントも人工物ですから、天然歯と同様、もしくはそれ以上のケアが必要です。インプラントをいつまでも健康に長持ちさせるために、日々のセルフケアはもちろんですが、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアが必要です。
〇定期的に装置や歯周組織のチェックを受けましょう
インプラントは丈夫な装置とはいえ人工物ですから、何らかの要因から不具合を起こさないとも限りません。例えば、咬み合わせがズレてしまい、強く当たる部分ができると無理がかかって破折やヒビを起こすこともあります。そのまま使っていればさらに負担がかかり、大きな破損につながることもあります。
また、周辺組織が炎症を起こしたことに気づかないままでいると、炎症の悪化にもつながります。歯周病と同様に、炎症の初期は痛みや出血などの症状が無いので、自身で気づかないという可能性もあります。
そこで定期的に歯科医院で検診を受け、装置に不備はないか、周辺組織の炎症は起こっていないかなどチェックしてもらいましょう。定期受診は早期発見につながり、早期に対処できるので、装置撤去など最悪の状態になる前に対処することができます。
〇定期的にクリーニングを受けましょう
定期健診時には、歯科衛生士によるインプラント周辺のクリーニングを行うことがほとんどです。歯垢や歯石をプロの技術と専用機器を使ってしっかり綺麗にします。日常自分の歯磨きで落としきれていない部分も綺麗になり、炎症予防や炎症初期段階の治療にもつながります。
〇正しいブラッシングの確認ができます
また、歯科衛生士によるブラッシング指導があることも多いです。歯磨きは利き手や週間などから個々に磨きグセが起こりやすく、同じところに汚れが残りやすい傾向があります。もしも歯を失った原因が歯周病の悪化だった場合は、よりブラッシングの改善が必要です。磨きにくい部分の磨き方や、正しい歯ブラシの当て方、道具の選び方など、インプラントを長持ちさせるために必要なノウハウを教えてもらえます。そしてセルフケアが維持できるように、定期的に磨き方のチェックができるのもメリットのひとつです。
まとめ
インプラントは丈夫で見た目にも美しいため、天然歯と並んでも違和感のない仕上がりです。保険適応ではないため治療費が高額にはなりますが、人工歯の材料は選択することができ、天然歯の透明感やツヤも再現できるような仕上がりにすることができます。
とはいっても人工歯であることは。入れ歯やブリッジと同じです。天然歯の持つ特徴をすべて再現することはできません。治療後は歯科医院で定期検診を受けることや治療後のケアを怠らないようにすることが、インプラントを長く健康に保つことができるポイントです。