歯科コンテンツ
CONTENTS
矯正治療によって起こる痛みとは? 安心して治療を始めるための痛み対策をご紹介
22.06.20
矯正治療をお考えの方の中には、治療中の歯の痛みや装置の煩わしさなどといったことも不安に感じてしまい、治療開始を躊躇される方もいらっしゃるのではないでしょうか。確かに歯を根っこから動かすので何の違和感も無いというわけにはいきませんが、治療方法の進化や進歩に伴って、痛みの軽減や対策もできるようになってきています。
そこで今回、矯正治療期間中の「痛み」について詳しく解説します。痛みを感じる原因や、予防対策なども併せて参考にされてください。
どんな時に痛みが起こるのか
矯正治療中の痛みが起こる原因は、大きく3つ考えられます。歯が動く時に起こる組織の変化による痛み、食事中に噛む圧力で起こる痛み、装置で粘膜を傷つけてしまった時の痛みです。以下にひとつずつ詳しく解説していきます。
〇歯が動くときの痛み
歯は、根っこが「歯槽骨」という顎の骨にあるくぼみに埋まった状態です。矯正治療で歯を動かすために力を加えると、押された部分の歯槽骨が刺激により吸収されます。そして反対側はその分隙間が空くので、新たな歯槽骨が形成されます。これを少しずつ繰り返し、動かしたい位置へ歯を誘導します。動的調整を行ってすぐは、歯槽骨が刺激を受けて溶け始めるため痛みが生じるのです。特にワイヤーを用いるラビアル矯正は、調整のため締め付けをおこなうので、マウスピース矯正よりも痛みを感じやすいといわれています。組織の修復が落ち着く頃には徐々に痛みは無くなるので、動的調整をおこなって1週間ほどで楽になる傾向にあります。
〇食事中の痛み
歯が動く方向の歯槽骨が溶けて吸収され、反対側の失った組織が吸収されるまでの期間は、組織が壊れた状態のため、その時期に歯に圧力がかかると強い痛みを感じてしまいます。ですので、日々の食事時間はしばらくの間「噛む」という動作が難しく、固いものはもちろん、お米やパンのようなさほど固くない食材でも、圧がかかるだけで歯が浮いたような鈍い痛みが起こります。組織の修復が落ち
着くのには徐々に痛みも感じにくくなりますが、「噛める」と思えるようになるまでは約1週間ほどかかります。
〇装置で粘膜を傷つけてしまった時の痛み
ワイヤー矯正は歯の表面に「ブラケット」という小さな装置を付け、それらをワイヤーで連結して動かしたい方向へ動くように調整をかけて歯を動かす方法ですが、取り付けた装置の突出している部分が口腔内粘膜に当たり痛みを感じる原因になります。特に治療開始初期は歯並びに凹凸が多いので、装置も粘膜に当たりやすくなったりします。慢性的に触れていることで口内炎ができやすくなったりするので、人と接触したりボールを使ったりスポーツは特に注意が必要です。歯に外側から強い衝撃があると口腔内を傷つけやすくなります。
また、歯が動くので矯正装置自体が浮いて外れてしまったりすることもゼロではないので、もしも次の受診日までに装置が外れてしまった場合には、かかりつけの矯正歯科へ早めに連絡しましょう。
矯正治療期間中に痛みが起こった際の対処法
矯正治療は歯に圧力をかけて動かすため、違和感や痛みを全く感じることなく行うことはむずかしいでしょう。しかし、日常の中でできる工夫や歯科医院での対処を受けることで痛みをある程度緩和することはできます。
では、実際に、痛みが起こったらどうしたらいいのでしょうか。対処法を痛みの原因に合わせてご紹介します。
〇痛む部分を冷やしてみる
痛みの原因が口内炎など「炎症」である場合は、頬の上から痛む部分を冷やすのも効果があります。
炎症部の熱を下げて、痛みの緩和が期待できます。
〇鎮痛剤を飲む
これも炎症を起こしていることでの痛みには有効的です。市販の解熱鎮痛剤で構いません。ただし、鎮痛剤による副作用がご心配な方(日常的に薬を飲んでいる、妊娠中など)は注意が必要ですので、飲む前に矯正歯科医院へ確認しましょう。
〇固い食べ物を控える
固い食べ物は噛むと歯に大きな圧力がかかります。その咬合圧で痛みを誘発してしまうことがあるため、動的治療を受けてしばらくは特に、固いものは控えることをおすすめします。動的治療を受けてしばらくは、組織の修復が不十分であるため、特に痛みを感じやすい時期ですので、柔らかいものを食べてしのぐなど工夫しましょう。
また、固いもの(せんべいやスルメなど)がワイヤーに当たって歪んだり外れたりする原因にもなってしまう可能性があるので注意しましょう。
〇矯正装置のワイヤーを調整してもらう
ワイヤー矯正の場合は毎月調整が必要なため、歯に新たな圧がかかると、調整後しばらくは痛みを感じやすくなります。通常、徐々に落ち着くのですが、痛みが長引いて食べることができない、眠れないなど日常生活に支障をきたしてしまうほど続く場合には、遠慮せず矯正歯科で診てもらいましょう。
場合によってはワイヤーの締め付けの調整も行います。
〇矯正用ワックスで装置が当たらないようにする
矯正装置が当たって口腔内粘膜が傷つきやすい場合には、その部分に矯正用のワックスを装置に付けて、装置の突起部分が粘膜に当たらないように保護します。
痛みを軽減できる矯正装置はあるのか
はじめにもお伝えしましたが「歯が動く」ということで起こる違和感や痛みはどうしても起こります。
徐々に痛みは和らぐので、この痛みについては日常生活で気を付けることで緩和しますが、装置が当たることや締め付けによる痛みは、用いる装置によって「痛みが起こりにくいものを選択する」ということで軽減できることがあります。
〇マウスピースによる矯正
マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置による矯正治療は、ワイヤー矯正のような装置を締める調整がなく、歯にかかる圧力が小さくて済みます。また、薄くて柔らかい素材でできているため、装置が当たることで口腔内を傷つけることもありません。
〇セルフライゲーションブラケット装置(デイモンシステム)
ワイヤートブラケットを用いる矯正治療ですが、従来の装置と違い、開閉式のふたが付いていて凹凸の少ない形状のため、装置が当たることによる痛みを防ぐことができます。また、従来よりも弱い力でも無理なく動かせるため、調整後の痛みも従来よりも軽減できます。
まとめ
矯正治療は歯を動かすことによる違和感や痛みはある程度仕方がないのかもしれません。虫歯のようなズキンとするような痛みとは違うので、我慢できる範囲でもありますし、日常生活の工夫や矯正歯科での緩和処置を行えば次第に痛みは楽になります。
また、最近では従来の矯正装置ほど痛まない装置や治療法も増えてきていますので、それらを選択することも痛み回避の方法のひとつです。装置の取扱いは歯科医院ごとに違うので、希望の矯正方法がある場合は、事前に取扱いがあるか確認しておくことをおすすめします