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インプラント治療後は「インプラント周囲炎」に注意が必要!
22.02.27
インプラント治療は最も天然歯に近い機能や審美性を持つ治療方法だと言われています。
しかしそれは治療後に正しいメインテナンスを継続していればの話で、メインテナンスをおろそかにしてしまうと、インプラントがダメになってしまうこともあります。今回は、そんな事態を招くかもしれない「インプラント周囲炎」についてご紹介します。これから治療を受ける方には、ぜひ知っていただきたい内容です。
知らないと怖い「インプラント周囲炎」
聞きなれない症状名かもしれませんが、インプラント周囲炎は「歯周病」と同じような症状を起こす歯茎の病気です。
インプラントは人工物ですが、その周辺の組織や骨は病気になる可能性がありますので、適切なアフターケアが重要なのです。
インプラント周囲炎とは
インプラントの人工歯に歯垢や歯石がついたままの状態が続くと、それらを住みかとしている細菌がどんどん増殖します。
細菌が出す毒素が歯茎を刺激して歯肉が炎症し、症状が進行するとインプラント体(根っこの代わりの部分)まで細菌感染が波及し、支えている顎の骨を溶かしてしまいます。このような症状を「インプラント周囲炎」といいます。
歯周病よりも進行が速い
天然歯で同じような細菌感染から起こる歯茎の炎症「歯周病」よりも、インプラント周囲炎のほうが進行が速い特徴があります。痛みなどの症状がほとんどないため、気づかないうちに進行していることがあります。そして、天然歯の歯周病に比べて10~20倍の速さで進行するともいわれています。
どんな症状?
インプラントは人工物ですが、天然歯と同じように歯垢や歯石が沈着します。虫歯にはなりませんが、歯肉の炎症を起こせば歯周病とおなじように出血、歯茎の腫れから始まり、膿が溜まったり顎の骨が解けて歯が揺れたりといった症状を起こします。重症化すればインプラントが脱落してしまう原因にもなってしまいます。
インプラント周囲炎はどう進行する?
インプラント周囲炎の進行段階と段階に応じた治療方法の例を紹介します。
個々の症状や進行度に合わせた治療法をご提案しますので、参考までにご覧ください。
①インプラント周囲粘膜炎
人工歯に付着した歯垢や歯石に棲む細菌が出す毒素が原因で歯茎が炎症した状態です。
周囲よりも少し赤みがありますが、痛みもなく気づきにくい時期です。
<治療方法>
歯面のブラッシングや歯石除去などを行い、清潔な状態を日常的に継続していくことで自然に回復しやすい時期です。
②軽度インプラント周囲炎
炎症が進行し歯周ポケットが大きくなるため、細菌がインプラント体まで浸食します。赤みが広がり、歯茎の下にある顎の骨が解け始めます。
<治療方法>
歯面清掃を行い、炎症を抑えていくために除菌したり、必要であれば抗生剤の投与を行います。
③中等度インプラント周囲炎
炎症がさらに進行し、歯周ポケットが広がることでインプラント体が露出します。出血したり、顎の骨の溶解がさらに進んでしまいます。
<治療方法>
歯面清掃や除菌などを行うのはもちろんですが、周囲炎を起こしている組織が再生するような治療を行うこともあります。
④重度インプラント周囲炎
症状が悪化し、出血や排膿を起こすようになると、顎の骨がさらに溶解してインプラントを支えられなくなり動揺します。最悪の場合は脱落を起こすこともあります。
<治療方法>
歯面清掃を行った後、周囲炎を起こしている組織を除去します。露出した患部に血小板や顎の骨を再生回復させる成分を周辺組織に注入し「骨再生」を行う手術を行います。
インプラント周囲炎にならないために気を付けること
インプラント周囲炎は適切な日々のケアと継続してメンテナンスを行っていれば予防できます。一般的な寿命は約9割の方が10~15年維持できているというデータがありますが、中には治療後40年以上長持ちしたというケースもあります。正しいケアとメインテナンスを継続すれば長持ちさせることができる装置ですので、まずはインプラント周囲炎にならないケアを行っていきましょう。
日々のブラッシング
まず基本は毎日行うブラッシングです。磨いているつもりでも、磨きグセがあると同じ部分に磨き残しが蓄積します。治療後は歯科衛生士によるブラッシング指導があります。天然歯よりも汚れが付きやすい場合もありますので、人工歯に歯垢が残らないよう、適切な歯磨きを行いましょう。
定期的なメインテナンス
治療が終わると、定期的に歯科医院に通院するのがおっくうに感じる方もいるかもしれません。ですが、毎日歯磨きしているという方でも100%汚れを落とすことは難しく、汚れが付いた時間が長くなればなるほど、歯ブラシだけでは落としきれない状態になってしまいます。定期的に歯科医院で歯面のクリーニング(PMTC)を受け、磨きグセが出ている場合はブラッシング指導で調整していきましょう。
定期健診
定期的なメインテナンスを受けるのと同時に、毎回歯科医師による定期的な装置のチェックも重要です。
人工歯の欠けや亀裂などはないか、咬み合わせは合っているか、インプラント体の動揺はないか等を確認します。
見つかった場合は早期に対処することで、最小限の被害に留めることができます。
まとめ
インプラントは人工物だと侮れません。歯周病と同じように、重症化すれば装置を失うことにもなりかねない歯茎の病気です。
特に歯周病で歯を失った方は口腔内環境が戻ってしまわないように要注意です。
インプラント周囲炎の治療は歯周病と違って保険適応外のため、高額の治療費がかかります。
お口の状態を健康に保ち、日々のケアとメインテナンスを継続して、インプラントをいつまでも美しく健康的に維持していきましょう。