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インプラントと差し歯は違う治療だということをご存じですか?
21.05.24
昨今、歯を失った際の修復方法として「インプラント」の認知度が高まってきています。
「よく噛めて見た目も良いのであればやってみたい」と思う人が増えていますが、これまでブリッジや入れ歯で補うことが主流だったこともあり、どんな治療なのかよく分からないといった方も多いのではないでしょうか?
また、「差し歯」と形態が似ていることもあり、差し歯との違いが分かりにくく、勘違いされているケースも多いようです。
そこで今回は、似ているようで実は違う修復方法である、インプラントと差し歯の違いについて詳しくご紹介したいと思います。
インプラントと差し歯の違いとは?
インプラントと差し歯の大きな違いは「自身の歯の根っこが残っているか」ということです。
インプラントは歯を根っこから喪失してしまった部分に行う修復方法ですが、差し歯は歯の頭(歯冠)は喪失していても、根っこの部分は残っている歯に行う治療の最終修復形態です。
インプラントと差し歯では、そもそも治療する歯の状態が違うため、治療の最終形態をこの2つのどちらかから選択するということはありません。
- インプラントとはどんな治療?
- 差し歯とはどんな治療?
- インプラントのメリット・デメリット
- ブリッジのメリット・デメリット
- 入れ歯のメリット・デメリット
インプラント治療は、歯を喪失した部分全体を再現させる修復治療です。
まず、歯を失った部分の下にある顎の骨に装置を入れるための穴を空ける外科手術を行います。
専用の機器で切削した穴にインプラント体を埋入することで、人工的に歯の根っこを再生し土台を作ります。
その後数か月、顎の骨や周辺組織インプラント体が結合する期間を置いたのち、土台にアバットメントという連結部を取り付けてそこへ人工歯を装着します。
差し歯は、自分の歯の根っこを土台にして、歯の頭(歯冠)を修復する治療です。
まずは歯の根っこの中にある神経(歯髄)を除去し、根っこの中(根管)を清掃を何度か繰り返します。
根っこの中がきれいになったらお薬を詰め、次に中心にピンで土台を立てます。ピンを立てた部分を歯科用材料で土台形成を行い、その土台に人工歯を装着します。
喪失歯の修復方法の比較
歯を失った場合、インプラントの他に行う修復方法は「ブリッジ」や「入れ歯」です。
それぞれのメリットやデメリットがあるため、違いを知ったうえで比較し、ライフスタイルに合わせ
て選択することをおすすめします。
インプラント治療の最大のメリットは、天然歯により近い機能性と審美性です。
歯の根っこから再現するため歯の安定感が良くしっかり噛めます。また、他の歯と連結することなく単体のため、見た目も美しく清掃もしやすいメリットがあります。装置の寿命も長く、10年で約90%以上問題なく使用できるというデータも発表されています。
デメリットとなる点としては、外科手術を伴うことや治療期間がトータルで長くかかることなどから、持病をお持ちの方や高齢者の方はご自身のコンデションを考慮することになります。また、保険適応外の治療となり、費用が高額になります。
ブリッジは、喪失歯の両隣の歯を支えとして、連結した形の修復物で補う方法です。
両側の歯と連結して装置を作成するため、入れ歯のように金属が目立つといったことはありませんし、歯科用接着剤で固定されているため咬む力には十分耐えうる装置で、外して管理する煩わしさなく使えるといったメリットがあります。
費用は基本保険適応となりますが、一部形態によっては保険適応外になることもあります。
デメリットとしては、両側の歯が虫歯でなくても歯を削らなければならなくなることと、咬合圧が支える歯にかかるため、負担が大きくなります。連結する歯の負担や見た目の観点から、前歯には適応されません。
不具合が起これば、連結した部分全てのやり替えが必要にもなってしまいます。
入れ歯は、喪失部のみを人工的な修復物で補う方法です。
人工歯とともに義歯床といわれる土台を歯ぐきの形に添うように作成し、歯ぐきと密接させて固定します。
部分入れ歯の場合は、隣接する歯にクラスプという金属バネをかけて固定することもあります。
ブリッジと比べて単体で修復しますので、両隣の歯を大きく削ることはありませんし、取り外しができるので清掃もしやすいメリットがあります。費用は保険適応ですが、床や人工歯、クラスプの素材によって保険適応外の場合もあります。
デメリットとしては、支えが少なく咬合圧には弱いです。歯ぐきが痩せたりすると合わなくなり、その都度調整が必要になります。
また、義歯床の厚みで違和感を感じやすかったり、見た目が目立つといったことが懸念され、外してしまう時間が長くなってさらに合わなくなってしまうといったこともあります。
差し歯と比較できる修復方法は?
歯の根っこが残っている場合の修復方法は、差し歯以外にクラウン(被せもの)があります。
先にお話ししたように、差し歯は補強の観点から前歯にしか行うことができません。
奥歯が根っこだけになった場合は、差し歯と同じ手順で根っこの治療を行った後、土台を作成して銀歯やセラミックなど修復素材でできたクラウンを被せて修復します。
差し歯は素材や制作方法がさまざまです
差し歯に用いられる修復素材は、見た目の観点から歯の色と同じ白い材料が用いられます。
これには保険適応の素材のものと、セラミックなど、より天然歯に近い色やツヤのある保険適応外の素材を用いて作成することができます。
また、全体的にセラミックにする場合や、裏側の目立たない部分だけ金属にするといったように、セラミックの素材や治療方法によっても費用が異なります。
保険適応外の素材の種類もさまざまで、どの素材を取り扱ってどんな治療を行えるのかは、歯科医院によって違いがあるため、事前に確認しておくことが必要です。
まとめ
インプラントと差し歯は、人工歯を土台に装着するという「形」としては似ているため、区別が難しく勘違いされやすいことがると考えられます。
そもそもこの2つは、インンプラントが歯を喪失した際の修復方法であり、差し歯は歯の根っこが残っている場合の治療というように、歯の残存段階が違うため、どちらで治療を行うか比較検討することができません。
双方とも治療方法を比較検討できる他の修復方法がありますので、それぞれの特徴をご理解いただき、メリットやデメリットを考慮した上で、治療方法を選んでいただければと思います。